建国100周年を迎える頃には現役2人で高齢者を支える社会に!
そして、中華人民共和国が建国100周年を迎える21世紀半ばには、現役世代2人で高齢者1人を支える社会となりそうである。国連経済社会局(DESA)人口部(Population Division)が発表した「世界人口予測2019(World Population Prospects 2019)」のデータを元に計算したところ[図表4]、現在(2020年)は現役世代5.9人で高齢者1人を支える状況にある。
しかし、2050年には現役世代2.3人で高齢者1人を支える状況になると見込まれている。振り返って見れば日本でも、1990年には現役世代5.9人で高齢者1人を支える状況にあったが、現在は現役世代2.1人で高齢者1人を支える状況に変化している。
したがって、日本が1990年から現在に至る30年間に経験した高齢化過程を、中国はこれから30年間で経験することになると見込まれる。
そこで中国政府は、社会全体で積極的に高齢化に対応する枠組みを作ることを目指して、「第14次5ヵ年計画期(2021~25年)における国家高齢者事業発展・高齢者介護サービス体系計画」を打ち出した[図表5]。
そこでは、老人ホームなど高齢者施設のベッド数を900万床以上にするなどの箱モノ整備に加えて、ソーシャルワーカーを2025年までに高齢者1000人当たり1人以上にするなどのサービス充実を、数値目標を掲げて取り組むこととしている。
さらに「シルバー経済の発展に全力を挙げる」とした第7章では、高齢者の生活改善に資する健康機器や家事ロボットなどの研究開発を促進することやシルバー産業に特化した産業園区を国内に10ヵ所ほど設置する計画であることを表明するなど、産業政策に関する方針もセットとなっている。
高齢化に関しては中国より30年先輩の日本では、高齢者施設などの箱モノや介護ロボットなどの研究開発が進んでいるのに加えて、ソーシャルワーカーの育成だけでなく高齢者向けの健康・娯楽などのサービスもすでに充実してきているので、日本で成功したモノ、サービス、ビジネスモデルは中国でも役立つ可能性が高い。
高齢者向けビジネスは、その国の社会保障制度を踏まえる必要があり、社会文化風土の違いもあるので一筋縄ではいかないものの、中国政府が重点をおく分野には補助金・税制優遇などの施策やサポートを得られることが多いだけに、日本企業にとってチャンスと言えるだろう。
三尾 幸吉郎
ニッセイ基礎研究所