かわいい我が子のためにと、子供の教育費は甘くなりがち。いつの間に負担が大きくなって家計が火の車、ということも珍しくありません。さらに、誰もが羨む高給取りでも、教育費負担増により老後破産に追い込まれるケースが後を絶ちません。みていきましょう。
年収1,000万円超えだったが…エリート会社員「教育費負担増」で老後破産の連鎖

我が子の教育費は甘くなりがち…貯蓄の妨げになるケースも

ただ問題は、年収が高いほうが負担に対する危機意識が低いということ。

 

世帯年収が低い場合、多くが「あれに通いたい」「これに通いたい」と言われた時点で、「どれだけお金はかかるのだろう……」と冷や冷やし、限度を超えると「無理!」と伝えることになるでしょう。

 

その点、高給取りほど教育費に対しての負担感には鈍く、「かわいい我が子がいうなら」と、教育費が雪だるまのように膨れ上がるケースが多いのです。

 

たとえば、中学受験。進学塾に通った場合、大手3社の授業料は5年生で平均月額4万円、6年生で月額4万5,000円。さらに春・夏・冬と講習会に通うと、平均35万円。トータルで年間80万~100万円ほどになります。

 

この時点で、小学生の塾代、家庭教師代の平均を大きく上回っていますが、これだけでは終わらないのが、最近の受験の怖いところ。最近の集団塾は、大抵、個別指導塾(サービス)も併設していて、「もう少し成績を伸ばしたいなら個別で」とか「苦手科目は個別で」などという誘い文句のもと、プラスαの通塾をするパターンが一般化。個別塾は(1コマ60~90分、月4回)平均3~5万円。年間40万~60万円の出費となります。「国語と算数を個別指導で」となると、それが倍となり、これまた雪だるま式に膨れ上がっていくのです。

 

かわいい我が子のために……の名目で、1年で数百万円を塾などに充てる家庭が、高収入世帯で増えているのです。

 

これが一時であればいいのですが、大抵、このような家庭は、子供が1人立ちするまで何かと教育にはお金をかけがち。さらに結婚、第1子誕生が平均よりもだいぶ遅いことが多いのも特徴で、教育費のピークが給与のピークである50代になるケースが多いといいます。

 

このような場合、どうなるのか……想像に容易いでしょう。給与がいいことに、子供の教育費を負担に考えことはほとんどありません。ひと昔前は、50代前半くらいで教育費の目途がつき、それから定年までは老後を見据えてお金の貯め時というのがパターンでした。金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』(2020年)によると、40代の金融資産保有額は平均1,177万円。50代で1,955万円、年金生活も多くなる60代では2,154万円となります。

 

【年齢別…金融資産保有額】

30代:644万円/423万円

40代:1,177万円/686万円

50代:1,955万円/1,000万円

60代:2,154万円/1,465万円

 

出所:金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』(2020年)より

数値左:平均値、右:中央値

※金融資産保有世帯の数値

 

ただ、50代で教育費のピークが来ると、50代で貯蓄拡大というストーリーを描くのは難しくなります。「そろそろ老後を見据えて貯蓄を本格化するか」と考えたころには、定年退職を迎えるころ。その頃には収入は大きく減少し、年金の受給が始まるまで十分な資産を築けない事態に。なかには高給取りだったのに老後破産……というケースも増加傾向にあるといいます。

 

高給だからという過信が招く最悪の結末。そうならないためにも、「我が子だから」という親心は大切にしつつ、きちんと老後を見据える冷静さが必要です。