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長生きがリスク?人生100年時代の不安はお金
一般的に長生きは「長寿」と言われるように、誰もが喜ばしいと感じることです。しかし、それは人生を全うするまでに十分なお金があればの話です。多くの人は老後のお金について不安を抱いており、それがさらに長寿命になるということは、「老後のお金が足りなくなるのでは?」と思う人が多くなるのも無理はありません。
そんな潜在的な不安が一気に噴出した出来事がありました。それは2019年、金融庁の諮問機関が発表したレポートに記載されていた「老後2,000万円不足問題」です。このレポート自体は不安を煽るのではなく人生100年、もしくはそれに近い長寿となった場合に老後資金がどれだけ不足するのかを試算したうえで、それを補うための自助努力として資産運用を検討するべきであると述べているだけで、それほど突飛なことを主張しているわけではありません。
しかし、この指摘が大々的に報道され、多くの人が関心を持ったのは、それだけ多くの人の心の中に潜在的な不安があったことの表れでしょう。
「人生100年時代」は本当なのか?
そもそも、人生100年時代は本当に到来するのでしょうか。国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口」では、2010年生まれの女性はその4分の1に相当する人が100歳まで生存する確率が高くなると試算しています。ちなみに同年生まれの男性であっても8.3%の人が100歳まで生存する可能性が高い、とあります。
このデータを見る限り、全員が100歳まで生きるわけではありませんが、すでに100歳まで生きることへの現実味が高まっていることは間違いありません。しかもこの100歳まで生存する割合は年々上昇しているため、いずれ3分の1、2分の1という数値になっていく可能性もあります。
基本的な退職からの流れを考える
モデルケースとして、厚生年金に加入し40年以上会社員として勤め、65歳で定年退職し100歳まで生きるとしても、厚生年金の金額はある程度決まっています。
平均的な厚生年金の受給額は、夫婦2人分で約22万円(令和2年度)です。この金額を見ると、現役時代と比べて目に見えて収入が減少することがわかります。このため、老後に必要な金額は3,000万円とも5,000万円とも言われています。
つまり、国民年金よりも受給額が高いとされる厚生年金の平均的な受給額ですら、今のままの生活を維持するのは難しい状況と言えるでしょう。
公的年金で生活は難しい
公的年金は死亡するまで給付されるので、長く生きた人は総受給額が多くなります。そのため、長寿の人には有利な制度です。
しかし、人口減少に伴う財源の問題から、支給年齢の引き上げや支給額が減少する可能性が示唆されています。また、年金の仕組み改定は今後も行われると推定されますが、マクロ経済スライドが導入されることを鑑みると、今後年金受給額が増えるとは考えにくい現状があります。
老後のために貯蓄をしても楽になるとは限らない
老後の生活を豊かにする為に今からできることの1つに、貯蓄があります。しかし、退職時や通常の貯蓄方法で得られる金額には限度があり、老後になって貯蓄を切り崩しながら生活をすることは精神的な負担も相当のものになります。
ここで重要なのは、貯蓄には限りがあるということです。仮に3,000万円もの貯蓄をつくり上げたとしても、それを毎月10万円ずつ切り崩していくと年間で120万円。このペースで貯蓄を切り崩していくと、3,000万円は25年で底をついてしまいます。
65歳で定年退職をした後に3,000万円を毎月10万円ずつ切り崩すと90歳でゼロになってしまうため、人生100年時代が現実になった場合には足りません。
老後のためにとにかく貯蓄を、という考え方自体は誤りではありません。それだけで本当に楽になる、安心が手に入るとは言えないことを知っておいてください。