先日、自民・公明両党の幹部が岸田首相と会談し、年金生活者1人あたり5,000円の給付金を要請、岸田首相も前向きに検討するというニュースが話題になりました。いつものように「ばら撒き」を批判する声のほか、「支援するなら現役世代を」という声も多く聞かれます。なぜ、現役世代にこそ支援が必要なのか、みていきましょう。
年金受給者に5,000円に「そうじゃない!」と総ツッコミ…ばら撒きの果てにある、日本の悲惨

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そもそも、なぜ「年金生活者」だけなのか?

――政府・与党から、年金生活者に5,000円の特別給付金で調整

 

突然、沸いた話に、「えっ、5,000円」と耳を疑った人も多いでしょう。これは受給額が減る年金生活者への支援として出てきた話。そもそも公的年金の支給額は、物価と賃金の変動に応じて改定されていくもので、4月からは現状よりも0.4%引き下げられることが決まっています。

 

【国民年金支給額(満額時)】

2012年:786,500円

2013年:(4月~9月)786,500円

2013年:(10月~3月)778,500円

2014年:772,800円

2015年:780,100円

2016年:780,100円

2017年:779,300円

2018年:779,300円

2019年:780,100円

2020年:781,700円

2021年:780,900円

 

そこにきて、昨今の物価上昇。長引くコロナ禍の影響のなか、年金受給者を救わなければ、というわけです。

 

これに対し、「現役世代に対する支援は?」と言いたくなるでしょう。前述のとおり、年金は物価と年金の変動に応じたものになっているわけですから、現役世代も給与が減り、そのなかでこの物価上昇、同じように現役世代も苦しいはずです。

 

厚生労働省『毎月勤労統計調査』によると、2021年度の集計はまだですが、2017年~2020年度の4年間、賃金は前年比マイナスを記録。1ヵ月単位でみてみても、前年同月比マイナスの月が目立ち、「現役世代だって厳しいんだ!」と声をあげたくなるのも仕方がありません(図表)

 

出所:厚生労働省『毎月勤労統計調査』より
[図表]賃金前年同月比の増減 出所:厚生労働省『毎月勤労統計調査』より

 

しかし政府は「現在進めている賃上げ政策で現役世代は所得が増えることが期待されるが、年金受給者は恩恵を受けにくい」としています。これが、今回、年金生活者に給付金を絞った大きな理由。「いま」ではなく「未来」の話をした結果、考えられた今回の給付金。賃上げが現実のことになることを、願わずにはいられません。