先日、自民・公明両党の幹部が岸田首相と会談し、年金生活者1人あたり5,000円の給付金を要請、岸田首相も前向きに検討するというニュースが話題になりました。いつものように「ばら撒き」を批判する声のほか、「支援するなら現役世代を」という声も多く聞かれます。なぜ、現役世代にこそ支援が必要なのか、みていきましょう。
年金受給者に5,000円に「そうじゃない!」と総ツッコミ…ばら撒きの果てにある、日本の悲惨

現役世代の負担、20年で3割増…さらに大きくなるのは確実

なぜ年金生活者なのか、なぜ5,000円の支給なのか、疑問符は色々と残りますが、いつものように「ばら撒きだ!」「選挙対策でしかない!」などと、すでに批判が続出しています。

 

確かに年金が拠り所の高齢者にとって、長引くコロナ禍の影響は大きなものですし、現役世代は、これから賃金が増える可能性があるというのも、期待を込めて納得したとしましょう。

 

しかし、確実にいえることは、「これから現役世代の負担は大きくなる」ということ。具体的には社会総務省『家計調査』をみていくと、税金や社会保険料などの非消費支出は、2000年に8万8,343円だったのが、2021年は11万2,634円と、この20年で3割弱ほど増えています。

 

消費支出について細かくみていくと、直接税は17%増。それに対して社会保障費は、2005年に介護保険がスタートしたこともあり、136%増と負担が大きくなっています。

 

【勤労世帯の非消費支出】

非消費支出:88,343円/112,634円(127.50%)

直接税:40,189円/47,2424円(117.55%)

社会保障:48,019円/65,3314円(136.05%)

うち公的年金保険料:30,424円/39,1654円(128.73%)

うち健康保険料:16,238円/21,2724円(131.00%)

うち介護保険料:ー円/3,701円

 

出所:総務省『家計調査 家計収支編』より算出

※数値左より、2000年、2021年

※(かっこ)内、対2000年増加率

 

この20年で勤労世帯の収入は7%しか増えていませんから、大きな負担増であることは明らかです。なぜここまで負担が大きくなっているかは、想像の通り、高齢化によるもの。総人口に占める65歳以上の割合は、2021年、29.1%。推計では、2030年に31.2%、2040年には35.3%まで上昇する見込み。現役世代が支えなければならない高齢者はさらに増えるわけですから、負担がさらに大きくなることは明白です。

 

検討段階に関わらず、「ばら撒きだ!」「参議院選対策だ!」などと多くの批判も寄せられている、年金生活者への給付金。しかしあまりに将来を見通せない現役世代にとっては、「選挙対策でもお金がもらえるなら歓迎」といったところでしょうか。将来的に負担増となる部分へのフォローが求められています。