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はじめに
資産運用において運用の成果であるパフォーマンスは、実はどういう資産や資産クラスに投資するか、どのくらいの割合で投資するかで、その大半が決まる。
この資産や資産クラスを組み合わせた金融資産全体をポートフォリオというが、リスク許容度によって人それぞれポートフォリオの最適な資産配分が異なる。
絶対に損を出したくないなどの理由で預貯金などの元本確保型の運用商品だけを100%持つ人もいれば、とにかく高いリターンを獲得するため、手元資金以外の大半を株式などのリスクの高い運用商品に投資する人もいる。
2019年夏に老後資金が足りないという「2,000万円問題」で取り上げられたように、多くの人は公的年金だけでは老後を安心して生活するのが難しく、やはり、老後を見据えた資産形成が必要である。
また、昨今の低金利環境下では、元本確保型の運用商品だけでは資産を十分に増やすことは難しいので、自己責任で適切な資産配分を決めることで、効率良く資産形成していくことが望ましい。
2021年3月末、加入者数が1,000万人※に近づいている「確定拠出年金(DC)」は典型的な老後のための資産形成手段である。
※ ニッセイ年金ストラテジー「DC加入者数は1,000万人に迫る」(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=69757?site=nli)から参照。また、「確定拠出年金統計資料」によると、2021年3月末時点、企業型と個人型の加入者数は750万人と195万人である。
確定拠出年金は、企業あるいは自分が拠出した掛金を、預金、保険、投資信託などから、どの運用商品に投資するか、それぞれの運用商品にどの程度配分するかを自身で決めて運用する私的年金制度である。
60歳まで資金の引き出しが原則不可となっており、老後のための資産形成以外の目的では利用できない仕組みになっている。このため、確定拠出年金の資産配分は、老後のための資産形成を目的としたポートフォリオの資産配分の典型例と言える。
本稿ではまず、国が自主的な老後のための資産形成を支援する目的で整備した制度である「確定拠出年金」における資産配分の現状を紹介する。次いで、数ある確定拠出年金の運用商品の中で比較的大きな割合を占めるバランス型投資信託を取り上げ、その中でも特に資産配分固定型に焦点を当てたいと思う。
その上で、日本での4つの金融危機直前から、資産配分固定型バランス運用や国内債券、国内株式、外国株式などのインデックスに月々2万円を投資し、それぞれ最終的にいくらになったのかについて確認したい。確定拠出年金を含めた老後のための資産形成について役立てる情報を提供できればと考えている。