「確定拠出年金」とは、国が「自主的な老後の資産形成」を支援する目的で整備した制度です。「老後2000万円問題」が騒がれる昨今、本制度をどのように活用していけばよいのでしょうか。今回は、ニッセイ基礎研究所の熊紫云氏が「確定拠出年金」における資産配分の現状とその運用商品の具体的な中身について比較・解説します。
確定拠出年金では何に投資したら良いのか?…外国株式型、国内株式型、バランス型、外国債券型と国内債券型でパフォーマンスを比較してみた (写真はイメージです/PIXTA)

バランス型投資信託はどんな運用商品であろうか

確定拠出年金では、国内債券型、国内株式型、外国債券型、外国株式型とバランス型などの運用商品から自由に配分を決めて組み合わせることができる。

 

その中で、比較的大きな比重を占めているバランス型投資信託は国内債券だけとか外国株式だけという一種類の資産クラスだけでなく、複数の資産クラスを組み入れている投資信託のことである。本稿ではバランス型投資信託を資産配分固定型、資産配分変動型、ターゲットイヤー型に分け、それぞれについて説明する。

 

資産配分固定型

 

資産配分固定型はあらかじめ決められた配分を維持するよう運用する投資信託である。

 

資産配分固定型は、必要に応じて自動的にリバランスを実施してくれる。資産価格が日々変動しているので、実際の資産配分が基本的な資産配分から乖離する。

 

この乖離を解消するためには、実際の資産配分が基本的な資産配分より大きい資産クラスを売却し、実際の資産配分が基本的な資産配分より小さい資産クラスを購入する必要があり、この投資行動をリバランスと呼ぶ。

 

実際の資産配分が基本的な資産配分より大きい資産クラスは、相対的に価格が上昇した資産クラスであり、実際の資産配分が基本的な資産配分より小さい資産クラスは、相対的に価格が下落した資産クラスである。

 

このため、リバランスは価格が上昇した資産クラスを売却し、下落した資産クラスを購入する戦略と言える。

 

資産配分変動型

 

資産配分変動型は基本的な資産配分を事前に決める資産配分固定型と違い、機動的に資産配分を変更するバランス型投資信託のことである。

 

主にTAA型とリスクコントロール型に分けられている
※ ニッセイ基礎研究所 高岡和佳子「リスクコントロール型ファンドは過剰なリスクを回避できるか」を参照。(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64534?site=nli)

 

TAA(Tactical Asset Allocation)型は短期的な相場見通しを考慮し、資産の割安、割高を判断して、今後価格が上昇しそうな資産クラスの配分を増やし、価格上昇が期待できない資産クラスの配分を減らす戦略で運用される。上手く行くかどうかは別として、より高いリターンを目指す戦略と言える。

 

一方、リスクコントロール型は価格下落回避を主な目的として、価格変動リスクが大きい時は、リスクの高い資産クラスへの配分を減らすことで価格変動リスクをなるべく抑え、安定的なリターンを目指す戦略と言える。

 

ターゲットイヤー型

 

ターゲットイヤー型は事前に設定したいくつかの目標の年に向けて、各資産クラスの配分を段階的、自動的に変更するバランス型投資信託である。

 

運用会社はいくつかの目標期日とそれまでの基本的な資産配分を設定し、次の目標期日に至るまで、資産配分固定型と同様に基本的な資産配分を維持するが、次の目標期日に至ったら、次の目標である基本的な資産配分に変更する運用となっている。

 

例えば、退職する年を最終的な目標の年として、若い頃は株式などリスクの高い資産クラスの割合を高くして積極的な運用をし、時間の経過とともにリスクの高い資産クラスの割合を下げ、債券、預金のようなリスクの低い資産クラスの割合を上げていく。

 

そして退職する年に到達すると、全てを安定運用に切り替えるといったものである。若いうちは積極的にリスクを取りリターンを獲得し、その後、目標年次に向けて順次リスクを減らしていく戦略と言える。