日本人は中流意識が強い国民性だといわれ、また政府も「中流層の復活」を掲げ、低成長から脱しようと懸命です。その影で薄給料で苦労している人たちがいました。みていきましょう。
平均給与433万円だが…「中間層復活」で露呈する、手取り13万円「非正社員」の悲哀

2000年以降、「年収200万円未満」が急増

実際に中間層はどのような状況なのか、国税庁『令和2年民間給与実態統計調査』をみていきましょう。平均年収(1年を通じて勤務した給与所得者による)は433万円。給与分布をみていくと、「300万円以下」15.5%、「400万円以下」17.4%をピークに減少していきます(図表)。

 

さらに経年でみていきましょう。2000年代に入り、ITバブル崩壊や不良債権問題、さらにリーマンショックと続き、平均給与は減少傾向。前年を上回ったのは、2000年~2010年までは1度しかありませんでした。2010年代に入ると、アベノミクス効果もあり、2014年から5年連続で前年を上回りました。

 

給与分布を対2000年比でみていくと、年収400万円未満で各階級とも増加、それ以上になると、年収2,000万円以上を除いて、すべて減少。この20年で、低所得層と富裕層は拡大、中間層は縮小したことになります。

 

【給与分布2000年と2020年の比較】

100万円以下:6.6%/8.4%

200万円以下:11.8%/13.8%

300万円以下:15.2%/15.5%

400万円以下:17.4%/17.4%

500万円以下:14.8%/14.6%

600万円以下:10.7%/10.2%

700万円以下:7.2%/6.5%

800万円以下:5.1%/4.4%

900万円以下:3.5%/2.8%

1,000万円以下:2.3%/1.8%

1,500万円以下:4.2%/3.3%

2,000万円以下:0.9%/0.7%

2,500万円以下:0.2%/0.2%

2,500万円以上:0.2%/0.3%

 

出所:国税庁『民間給与実態統計調査』

※数値左:2000年、右:2020年

 

低所得者の拡大と中間層の縮小。それ以上に驚きなのが、「年収200万円以下」が22%にものぼることではないでしょうか。この水準になると賞与を手にすることは稀でしょうから、単純に12ヵ月で割るとおおよそ16万円。手取りにすると月13万円以下という人たちが、実に5人に1人にものぼります。

 

低所得者層の増加の一因とされているのが、非正社員の増加です。総務省『労働力調査』によると、2000年2月、正社員3,630万人に対して、非正社員は1,273万人。その後、規制緩和などもあり、非正社員は増加の一途を辿ります。2014年10~12月期には2,000万人の大台に。その後は大きくは増えていませんが、この20年で倍近くの非正社員が生まれました。

 

待遇面で正社員よりも劣る非正社員は、当然、給与も低水準の傾向にあります。正社員の数はそれほど変わっていないので、元来、正社員だった人は実感がないかもしれませんが、「働けど働けど、薄給で生活は楽にならない」という人たちが、この20年で大量に生まれたわけです。

 

日本が元気だったころのように「中間層を復活させる」ことを目指している日本。ただそれと低所得者を中間層へ引き上げることは別次元の話。さらに格差は広がり、低所得者はおざなりにされる……そんな未来が現実味を帯びています