春闘の回答が出てくる時期ですが、そんななか、「トヨタが満額回答」というニュースが大きく伝えられました。それに追随するように、日産自動車やホンダも同様に満額回答と伝えられています。一気に高まる賃上げムードですが、冷ややかにみる人が多いようです。みていきましょう。
トヨタ・日産・ホンダ満額回答だが…賃上げニュースに「日本のサラリーマン」深いため息

【関連記事】自動車メーカー8社の平均給与…「トヨタ」「ホンダ」「日産」日本を代表する大企業の給与額

自動車メーカー大手3社、賃上げ効果はどこまで波及する?

先日、トヨタ自動車は2022年春闘で賃金・一時金について、労働組合の要求に満額回答。さらに日産自動車とホンダも、労働組合の要求に対し満額回答との報道がありました。

 

トヨタの労働組合は全組合員平均を基準とした賃上げ要求に代わり、職種や職位ごとに月1,600円から4,900円の賃上げ、昨年を0.9カ月分上回る6.9ヵ月分の年間一時金を求めていました。また日産の労働組合側は平均月8,000円の賃上げと、5.2ヵ月分の年間一時金を、ホンダの労働組合側はベア相当の賃金改善分として月額3,000円と、6.0カ月分の年間一時金を求めていました。

 

自動車業界は半導体などの供給制限に伴い、生産計画の見直しが迫られたり、電動化への対応が急務だったりと、経営課題は山積しています。それにも関わらず、異例の速さの回答に、驚きとともに歓迎の声が多く聞かれます。

 

さらに期待されるのが、中小企業などへの波及です。自動車業界のすそ野は広く、全就業人口の約1割にあたる、約500万人もの人が関わっているといわれています。ピラミッド型の構造は、どの産業でも同じですから、日本のトップ企業の決断がほかの業界にも広がることを期待したいところですが、やはりコロナ禍、すべての業界が好調というわけではないので、ある程度、限定的な動きになる懸念はあります。

 

今回の賃上げ、歓迎ムードではありますが、一方で格差拡大を懸念する声も聞かれます。

 

国税庁『民間給与実態統計調査』によると、会社員(1年を通して勤務した給与所得者)の平均年収は433万1,000円。従業員の規模別にみていくと、「30~100人未満企業」で408万円、「100~500人未満企業」で430万円、「500~1,000人未満企業」で464万円、「1,000~5,000人未満企業」で496万円、「5,000人以上企業」で508万円。また「従業員10人未満企業」では347万円。従業員規模10人未満企業と、5,000人以上企業の間には、平均値で150万円程度の年収差が生じています。

 

一方、全会社員に占める割合は、「30~100人未満企業」が16%、「100~500人未満企業」が21%、「500~1,000人未満企業」が8%、「1,000~5,000人未満企業」が14%、「5,000人以上企業」が11%。また「従業員10人未満企業」は全体の15%になります。トヨタ、日産、ホンダというと上位11%の企業。これらの企業の賃上げ効果が、末端まで波及するかといえば、今回の賃上げ幅程度では難しいだろう、という声が聞かれます。