(※写真はイメージです/PIXTA)

心身に不調を抱える日本人が増えているといいます。平均寿命は80歳を超え、世界的にも日本は長寿大国であることは間違いありませんが、一方で要介護にならず自立して生活できる年齢である「健康寿命」と平均寿命との差が問題となっています。一石医師は健康寿命を延ばすことが次々と臨床試験などで実証されてきている「温泉」に注目しています。温泉がアンチエイジングや美容など、QOLを向上するといいます。温泉博士の一石医師が「医者いらず」といえる温泉の効能や効果的な利用法を解説します。

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週末の2泊3日の温泉旅行で症状が改善

ここ2年近くのコロナ禍でステイホームが続く中、私のもとには、食欲不振、胸焼け、胃もたれ、倦怠感といった症状を訴えてこられる方が少なくありませんでした。

 

しかし胃カメラなどの検査では特に異常が見つかりません。それにも関わらずなかなか改善しない方もおられ、コロナ禍ではなかなかできなかったのですが、従来ならば温泉を勧めることがありました。

 

二つのケースを挙げてみます。一人は60代の男性。なかなか改善しない食欲不振と倦怠感がありましたが、胃カメラなどの検査では軽い逆流性食道炎が見られる程度でした。もう一人は70代女性、同様に食欲がわかない、疲れやすいということでしたが、胃カメラでは軽い胃炎と、あとは食物の残渣が残っていました。つまり消化不良です。

 

男性には炭酸水素泉で、かつ飲泉可能な温泉をお勧めしました。結果はというと、週末の2泊3日の温泉旅行でほぼ症状は改善しました。

 

これは炭酸水素泉のアルカリ性の湯により胃酸が中和され、治療薬と同様の効果を発揮したということです。医学的な治療において、逆流性食道炎では胃酸を抑えることがとても有効とされています。この患者さんの場合、温泉の湯が〝制酸作用〟を示し食道の炎症を抑えたと考えられます。またストレスにより胃酸過多になっていた可能性もあります。環境改善によるリラックス効果もあって症状が改善され、同時に疲労回復にも繋がったと考えられます。

環境改善がストレス緩和、全身の血流改善

70代の女性には、炭酸泉でやはり飲泉可能な温泉をお勧めしました。60代男性と同様、プチ湯治と言われる週末温泉旅行ですこぶる症状は改善し、食欲も戻りました。

 

この方の病態の原因としては便秘がベースにあり、胃腸に未消化物が渋滞してしまい、結果、胃内に食べ物の残渣が残り、食欲不振の原因となっていました。ひとによっては胃酸も逆流して、胸焼けの原因にもなります。

 

対して炭酸泉は、胃腸の血管を拡張させて血流改善を促し腸管の動きを改善させます。また温泉に含まれているマグネシウムなどのミネラルも便の緩下作用があります。この方は便秘が解消されると胃腸の動きも自ずと活発になり、食欲不振も改善したのです。

 

またこの方も60代男性がそうだったように環境改善がストレス緩和につながり、全身の血流改善作用もあり倦怠感もみるみる改善されたのです。

 

医療的に見て、湯治について従来言われてきた伝承的な効果も重要です。数週間にわたる温泉療養はその方の体質を変えたりして、持病からの解放を促しますので、時間的な余裕がある方に温泉療法は悪くない選択肢だと私は考えています。

 

しかし誰もが忙しい現代社会において、特に現役世代はなかなか数週間の休暇や療養をとるのは難しく、最近人気の〝プチ湯治〟でも、十分効果的だと考えられます。つまり週末を上手く利用して気分転換がてら温泉を利用するスタイルです。

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※本記事は、最先端の「自分磨き」を提供するウェルネスメディア『KARADAs』掲載の記事を転載したものです。

医者が教える最強の温泉習慣

医者が教える最強の温泉習慣

一石 英一郎

扶桑社

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