(※写真はイメージです/PIXTA)

誰もが体のだるくなったことはあるでしょう。そのほとんどは、「働きすぎた」「何かで徹夜した」など、自分でだるい理由がわかっています。それは休息をとったり、気晴らしをしたりして、元気を取り戻せばいい。しかし、よくあるだるさのなかにも、病気が隠れていることがあります。よくあるだるさから病気を疑うポイントを、総合診療科医の視点で3つ紹介します。

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日単位から週単位でくる強いだるさ

読者の皆さん(患者さん)がだるさを訴えて、初診外来にきたときのことを考えてみる。病院の総合診療科が専門とする領域に“診断”がある。何が原因かわからない症状に対して、問診でいくつかの病気の可能性を挙げて、診察や簡単な検査で絞り込み、1つの病気の診断にたどりつく。よくある病気(common disease)ならばそのまま我々が治療まで行う。専門的治療が必要であれば、臓器別専門科と連携する。

 

初診外来で、だるさを起点として比較的よく見つかるのは、貧血、糖尿病、内臓の病気(心臓、肺、腎臓、肝臓)、感染症、がん、睡眠時無呼吸症候群などである。これらは詳しい問診と簡単な検査で、ある程度の診断をつけることができる。医師は、問診で症状がいつから始まって、どの程度のだるさなのか、日常生活に支障があるのかという進行スピードと程度を確認する。また、だるさ以外の症状は何が伴っているのかを確認する。

 

もし、“急に強いだるさ”を感じはじめて、日常生活に支障がでている。そうなる心当たりが本人にない。そんなときは、重い感染症や急に発症する糖尿病、心臓・肝臓・腎臓の病気の可能性をまず考える。病気には、それぞれ特有の進行スピードがある。心筋梗塞や脳卒中は、ある瞬間、秒から分の単位で一気に症状のピーク(胸が苦しい、心臓が止まる、麻痺が出る)に達して、治療なしには症状はよくならない。

 

がんや認知症は、月から年の単位で進行し、症状もゆっくりと出現してくる。だるさの症状でも、“日から週の単位で強く出てきた”時は、進行の早い病気の可能性があり、要注意となる。基本的に、病気は早く発見して早く介入すれば容易に治る。発見が遅れて進行すれば、治療は容易ではない。

「だるさ」プラス ✖✖(症状)もある

受診する主な理由がだるさだとしても、問診で深堀りすると、何かしら他の症状も伴っていることが多い。「気にしていなかったけれど、言われてみれば××もあるな」、と。

 

例えば、早足や階段昇降で息切れをして、休むとよくなる。体重が減る。発熱。喉が乾く。トイレが近い。人より汗をかいて暑がり。動悸がする。足がむくむ、などの症状である。体重減少の有無は重要な情報だが、定期的に体重を測っていない人も多い。それならば、衣服や普段身につけているものがゆるくなる、過去の写真との比較で推定する。

 

だるさというのは漠然とした症状で、どんな病気でも現れる。むしろ、プラス××(症状)の方を切り口にして、原因臓器を絞り込んだほうが、診断に迅速に辿り着けると医師は考える。

 

例えば、息切れする、体重が減るという症状がプラスされていたら、このような枠組みを頭の中で医師は考えている。

 

・動きで息が切れるのは、ざっくり言えば細胞への酸素供給が足りていない。酸素の取込み(肺)か、酸素を届ける血流が悪い(心臓)、血流にのって酸素を運ぶ赤血球が薄い(貧血)かが考えられる。この枠組みを疑えば、バイタルサイン(血圧、脈拍、血中酸素濃度など)と診察、採血、レントゲン、心電図で、おおよそこのタイプの病気だろうと絞り込みへ進める。

 

・体重が減るのは、ざっくり言えば吸収したエネルギーと、消費するエネルギーのバランスが崩れている。食事を食べられていないか(原因はいろいろ)、食べても栄養を吸収して細胞まで取り込めていないか(消化器の病気や糖尿病)、栄養を余計にどこかで消費しているか(感染症や甲状腺の病気、がん)が考えられる。

 

プラス××の症状もきたすのは、こういう系統の病気があるかもしれない。それならば、この診察と検査をまず行なう、と診断を絞り込んでいく。

 

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※本記事は、最先端の「自分磨き」を提供するウェルネスメディア『KARADAs』掲載の記事を転載したものです。