最近、「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」という病名をテレビなどで聞くことがあるかと思います。数年前の日本整形外科学会の調査によると、脊柱管狭窄症に悩む人は、腰だけに絞っても360万人以上と推定され、特に70歳以上では10人に1人の割合の人が罹患している計算になります。高齢化が進む日本では、今後もこの病気に悩む人の数は増加の一途を辿ることになります。今回はその脊柱管狭窄症の原因と症状、治療法について見ていきましょう。白石脊椎クリニック院長・白石建医師が解説します。
【関連記事】“コレステロールが高い”だけでは動脈硬化にならない。意外と知られていない「動脈硬化性疾患」の真因【医師が解説】
なぜ「脊柱管狭窄症」になってしまうのか?
背骨は主に首と背中と腰の3つの部分に分かれます。首の部分を頚椎(けいつい)と呼び、背中の部分を胸椎(きょうつい)、腰の部分を腰椎(ようつい)と呼びます。脊柱管狭窄症は腰椎と頚椎に多い病気です。
背骨は、「椎骨(ついこつ)」という後ろに穴のあいた骨が一つ一つ上下に重なるように繋がって形成されています。この椎骨の後ろの穴も上下につながって縦に長いトンネルができています。このトンネルを「脊柱管」と呼び、このなかを神経の本幹が通っています(図表1,2)。
脊柱管狭窄症とはこのトンネル、「脊柱管」が狭くなった状態です。その原因は、生まれつき脊柱管が狭い先天的なものと、年とともに狭くなる経年的なものがあります。多くの例ではこの二つの原因が重なって発症します。
経年によって脊柱管が細くなる理由としては、椎骨の角にトゲが出たり、椎骨を上下につなぐ靭帯が厚みを増したり、椎骨と椎骨の間でクッションの役目をする椎間板がつぶれて周りにはみ出たりすることが挙げられます。これらが脊柱管を塞いでしまうのです(図表3,4)。また、すべり症と言って、上下の椎骨が前後あるいは左右にずれてしまい、その結果脊柱管が狭くなる病気もあります(図表5)。
白石脊椎クリニック 院長
東京歯科大学 市川総合病院 整形外科 客員教授
中華人民共和国 大連市第2人民病院 整形外科 客員教授
日本脊椎脊髄病学会 名誉会員
1950年大分県生まれ。慶応大学医学部を卒業後脊椎専門医の道を選ぶ。1991年から3年間ロンドンに留学し、脊椎の権威ヘンリー・ヴァーノン・クロック氏に師事し、知識と技術を極める。その後、東京歯科大学市川総合病院勤務を経て、2016年、自由診療の白石脊椎クリニックを開業。
世界初、頸椎外科史上初めての「筋肉への低ダメージの手術」(白石法)を開発。NHK『きょうの健康』やTBS『これが世界のスーパードクター』に出演。
白石法は国際的にも高い評価を受け、アメリカ、ヨーロッパ、中国、東南アジアなど世界中で講演や依頼手術も行っている。2014年ベトナム・ホーチミン市から名誉市民を授与される。2015年国際頚椎学会学会長を務め、日本脊椎脊髄病学会の最優秀論文賞を受賞、さらには国際頚椎外科学会の最優秀演題賞を3回も受賞するなど、日本の低侵襲脊椎外科の第一人者である。
著書に『やってはいけない脊柱管狭窄症の治し方』(青春出版社)がある。
白石脊椎外科ホームページ(https://shiraishi-spine.com/)には脊柱管狭窄症に関するコラム記事、動画を多数掲載。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載現役医師が解説!様々な「カラダの不調」への対処法