(※写真はイメージです/PIXTA)

最近、「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」という病名をテレビなどで聞くことがあるかと思います。数年前の日本整形外科学会の調査によると、脊柱管狭窄症に悩む人は、腰だけに絞っても360万人以上と推定され、特に70歳以上では10人に1人の割合の人が罹患している計算になります。高齢化が進む日本では、今後もこの病気に悩む人の数は増加の一途を辿ることになります。今回はその脊柱管狭窄症の原因と症状、治療法について見ていきましょう。白石脊椎クリニック院長・白石建医師が解説します。

「腰」の脊柱管狭窄症について

ここからは、各部位ごとの脊柱管狭窄症の症状や特徴について解説します。

 

「腰部脊柱管狭窄症」には2つのタイプがあり、1つは「馬尾(ばび)型」、もう1つは「神経根(しんけいこん)型」といいます。

 

腰の脊柱管を通る神経の本幹は、束のようになった細い神経が馬の尻尾のように見えるため「馬尾」と呼ばれており、この馬尾から分かれた神経の枝の部分は「神経根」と呼ばれています(図表6,7)。

 

 

 

この神経の束である馬尾が、狭くなった脊柱管の中でひとまとめに締め付けられるのが「馬尾型」、神経根が挟まれるのが「神経根型」です。また、馬尾型の中には神経根型も合併している混合型脊柱管狭窄症も多く含まれます。

 

■「馬尾型」の特徴・症状:お尻~脚にかけて痛み・痺れ/休み休みでないと歩けない など

 

 

馬尾が締め付けられると、お尻から太ももの裏側、ふくらはぎ、足にかけて痛みや痺れが出ます。足に力が入らなくなって躓きやすくなるケースもあります。これらの症状は、左右で重い側と軽い側があるとしても両方の足に症状がでます。

 

また、腰部脊柱管狭窄症には「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」という特徴的な症状があります。一度に長い距離を歩くことができなくなり、途中で何度も腰掛けたりしゃがんだりして休み休み歩く症状です。また、立ち上がってもすぐに腰をまっすぐ伸はすことができず、歩いているうちに徐々に前かがみになってしまいます。

 

その他にも、馬尾型の症状が進行すると、排泄のコントロールが難しくなることがあります。すると、何度もトイレに駆け込むことになったり、我慢が利かなくなったために漏らしてしまったりする可能性もあります。

 

■「神経根型」の特徴・症状:お尻~脚にかけて強い痛み/下肢の脱力 など

次に神経根型の脊柱管狭窄症ですが、本幹から枝分かれした神経根が、骨と骨に挟まれて症状をもたらします(図表9)。

 

 

症状は主にお尻から太もも、ふくらはぎ、脛(すね)にかけての強い痛みと下肢の脱力です。

 

馬尾型との違いとしては、左の神経根が圧迫されれば左だけに、右の神経根が圧迫されれば右だけに症状が出ます。また、神経根型では排泄機能の障害は起きません。

 

<腰部脊柱管狭窄症の治療法>

腰部脊柱管狭窄症の治療法としては、痛みやしびれなどの症状の程度に応じて、運動療法や薬物療法、あるいは温熱、電気、マッサージなどの理学療法をもちいた保存治療をおこないます。

 

強い痛みやしびれには、神経ブロックが効果を発揮することがあります。神経ブロックには主に硬膜外ブロックと神経根ブロックがあり、神経根ブロックは特に神経根型の狭窄症に効果的です。

 

しかし、神経の圧迫が強く、保存治療を受けても日常生活動作や排泄機能の障害が悪化してゆくような重症例では、手術によって神経の圧迫を解除しなければなりません。

 

脊椎の手術には専門的知識と技術、そして経験が必要とされます。手術法はいろいろあり、それぞれに一長一短があるので、個々の患者さんに合った最善の方法を慎重に選択しなければなりません。

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。

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