(※写真はイメージです/PIXTA)

小児科を受診すると、さまざまな薬を処方されます。「病院で処方されたのだから効くだろう」とそのまま飲ませてしまいがちですが、「子供に処方される薬の効果と効能について正しい知識を持っておく必要がある」と、医療法人啓信会きづ川クリニック小児科医の米田真紀子氏はいいます。今回は、感冒時の子供の咳と、咳止め(鎮咳薬)と呼ばれる薬の効果について詳しく解説します。

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大人より深刻になりやすい「子供の咳」

子供の風邪のつらい症状のひとつに、咳があります。咳をなんとかしてほしい、という主訴で外来に来られる方が多くいますが、ひと口に咳といってもいろいろな種類があり、お薬で和らげることのできる咳と、そうでない咳とがあります。

 

小児科医は、診断だけでなく、その咳の主な原因はなにか、どうすればその咳を緩和できるのかを考える必要があります。

 

人間には異物を体外に排出しようとする機能が備わっています。気道の粘膜にくっついたウイルスや埃などの異物を感知し、その情報を脳にある咳中枢に伝え、さらに咳中枢から筋肉に信号を送って、筋肉を激しく収縮させることによって気流を生み異物を取り除こうとするはたらきが、咳といわれるものです。

 

気道の粘膜は常に粘液によって保護されていますが、炎症が起こると、異物をからめとるためにこの粘液の量が増えたり、粘り気が増したりするために、咳中枢が刺激される頻度が増えてしまいます。

 

また、鼻炎が起こると鼻粘膜の粘液(=鼻水)も増えます。小さい子供の場合は、適切に鼻をかめないので、鼻に溜まった鼻汁が喉の奥に流れて「後鼻漏(こうびろう)」という状態が起こりやすく、さらに痰や鼻水を排出できるほど強い咳もできない場合もあるので、大人よりも咳の症状はひどくなりがちです。

 

このように、咳は異物排出のために体になくてはならないものですが、度が過ぎるとしんどい症状につながってしまいます。この咳症状とどのように付き合っていくのかが重要な課題となります。

咳止め薬にも種類がある

上述のように、そもそも咳は体から異物を排除する大切な反応なので、基本的にはお薬で止めることはできないというのが大前提です。それでもどうしても咳をなんとかしたいという場合にだけ、考慮されるべきなのが「鎮咳薬(ちんがいやく)」です。

 

鎮咳薬には、脳の咳中枢に作用する中枢性鎮咳薬と、それ以外の末梢性鎮咳薬とに分けられます。

 

中枢性(ちゅうすうせい)鎮咳薬

 

中枢性鎮咳薬は、麻薬成分を含む麻薬性と、麻薬成分を含まない非麻薬性のものに分けられます。

 

麻薬性といっても麻薬成分は微量なので、数日間の服用で中毒を起こしたりするものではありませんが、咳中枢だけでなく呼吸中枢を抑制するため、12歳未満の子どもには処方できないことになっています。どうしても咳が困る場合には、小児の場合はやや効果がマイルドな非麻薬性の鎮咳薬が処方されます。

 

末梢性(まっしょうせい)鎮咳薬

末梢性鎮咳薬とは、脳に直接作用せず、咳の発生を抑える作用のあるお薬で、代表的なものに「去痰薬(きょたんやく)」があります。

 

去痰薬とは、文字通り痰を取り去るお薬ですが、このなかにもいくつか種類があります。

 

まずは、痰の粘り気を取る作用があるもので、痰のネバネバ成分であるムチンの産生を減らすはたらきがあるものや、ムチンを分解して減らす作用のあるものがあります。また、気道の滑りをよくする成分を増やして、痰を取れやすくする作用のあるものもあります。

 

痰が絡んでいても、子どもの咳の力ではなかなか取れないことがあるので、痰がからんだゲホゲホというしんどい咳が続く場合には、これらのお薬を単独あるいは併用することで、効果を期待します。

 

また、よく「咳止めテープ」と誤解されがちな「貼付薬」も末梢性鎮咳薬に分類されますが、実は気管支を広げる作用のあるお薬です。同じ成分での飲み薬もありますが、副作用が出やすくなるため併用はできず、貼付薬か内服薬どちらか一方を使用することになります。

 

気管支喘息ではない人は、そもそも気管支は狭まっていないため、気管支を広げても咳にはまったく効果がありません。逆にいえば、これを貼って咳が軽くなった、という人は、気管支喘息の合併を疑わなければいけません。

 

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※本記事は、最先端の「自分磨き」を提供するウェルネスメディア『KARADAs』掲載の記事を転載したものです。