コロナ不況の飲食業界…有価証券報告書から給与事情を探る
苦境に立たされる飲食業界。
厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、飲食店の平均給与(基本給)は月額25万4,800円、手取りはおよそ20万円ほど。推定年収は358万6,300円です。大卒に限ると、推定年収は419万5,100万円、男性大卒では438万2,000円。
年齢による賃金カーブをみていくと、20代前半で230万円、年齢と共に上昇し、ピークは40代前半で420万7,500円です。主な産業別と比べると「宿泊・飲食サービス業」の平均給与は低く、また賃金カーブも緩やかな曲線を描きます。「飲食業界は低賃金か?」と質問されれば、残念ながら相対的に「低賃金です」といわざるを得ない業界です。
上場企業の個別の給与事情を有価証券報告書から紐解いていきましょう。売上高上位の企業に焦点をあててみます。多くが持株会社で、経営の中枢部の数値となるので、実態よりも給与は高くなる傾向にありますが、「FOOD & LIFE COMPANIES」や「トリドールHD」が700万円台。最近、都市型店舗が増加している「くら寿司」は400万円台。平均勤続年数が短いこともあるのでしょう、他業界の上場企業と比べて、平均給与は低めです。
ちなみに記事冒頭に登場したワタミは、平均408万円(従業員数:1,440人、平均年齢:41.9歳、平均勤続年数9.48年)でした。
■ゼンショーHD
600万9,000円
(従業員数:627人、平均年齢:37.7歳、平均勤続年数:7.6年)
■すかいらーくHD(レストラン事業)
638万4,217円
(従業員数:551人、平均年齢48.8歳、平均勤続年数:21.6年)
■FOOD & LIFE COMPANIES(元スシローグローバルホールディングス)
751万5,108円
(従業員数:214人、平均年齢:41.1歳、平均勤続年数:2.8年)
■吉野家HD
660万7,000円
(従業員数:333人、平均年齢:49.2歳、平均勤続年数:15.9年)
■コロワイド
600万0,000円
(従業員数:105人、平均年齢:43.8歳、平均勤続年数:12.1年)
■プレナス
558万4,000円
(従業員数:1,209人、平均年齢:41.07歳、平均勤続年数:13.74年)
■くら寿司
453万6,011円
(従業員数:1,530人、平均年齢:31.1歳、平均勤続年数:6.8年)
■トリドールHD
727万4,000円
(従業員数:188人、平均年齢:40.49歳、平均勤続年数:5.08年)
業界的には低い給与水準の飲食業界。元々利益率が低く、給与事情も良いとはいえない業界です。さらにコロナ禍の影響が甚大というケースも多く、なかには給与に反映されている企業も。「コロナが収束したら、また以前のようにお店で食べて飲んでと楽しみたい」というファンも大勢いますから、なんとかこの苦境を乗り切ってほしいものです。