(※写真はイメージです/PIXTA)

晩婚化や働き方の多様化から「不妊」に悩むカップルは多くいます。不妊の要因はさまざまですが、そのひとつに「栄養不足」が挙げられると、新百合ヶ丘総合病院の袴田拓氏はいいます。また、袴田氏は現代女性の「美意識の過剰な高まり」が、栄養不足の一端にあると警鐘を鳴らしています。不妊解決のカギを握る要素について、「栄養」の観点から詳しくみていきましょう。

日常的なエネルギー危機…妊娠に悪影響な「低血糖」

不妊でお悩みの女性を内科的に診察していて次に目立つのは、低血糖体質の方です。血糖値、すなわち血液中のブドウ糖濃度が低くなるということは、身体がエネルギー源不足に陥り生存の危機に向かうということです。身体はその危機に反応してアドレナリンを緊急分泌させることで血糖値を上昇させます。

 

アドレナリンとは緊張ホルモンですから、発汗、動機、口渇、手の震えなどをともに引き起こし、就寝中では中途覚醒、悪夢、歯ぎしりなどにつながります。

 

低血糖体質の女性は日常的にエネルギー危機に瀕しているわけですから、当然卵子も同様の危機にさらされ妊娠に悪影響が出ます。

 

低血糖体質かどうかを判断するには、血液検査による単発の血糖値測定ではその推移が評価できませんので、むしろエネルギー貯蔵状態を表す中性脂肪(空腹時)の異常低値(<50mg/dlなど)に着目する方が実践的なようです。

 

低血糖体質が増えている背景は「ストレス」

 

しかしいったいなぜ低血糖体質の人が増えているのでしょうか?

 

その背景には慢性的な「ストレス増加」があるようです。人間関係や過重労働など社会的ストレスばかりでなく、アトピーなどの慢性疾患や化学物質などもそれに該当します。

 

ヒトはストレスに対して副腎という臓器で戦っています。コルチゾールというホルモンを分泌することで、エネルギー源たる血糖値を維持し、血圧を保つことで臨戦態勢を整えます。しかし戦いがあまりに長期化すると次第に副腎の反応が弱くなり、コルチゾール分泌の低下とともに血糖値は地盤沈下しやすくなるのです。

 

これはアメリカのJames Wilsonという医師が提唱した「副腎疲労」という現象ですが、日本の医学界ではまだ標準的知見となっていませんので、相談に乗ってくれる医師がほとんどいないのが実情です。ダイエットのため食事制限するとかえって体調が悪くなる方は、「副腎疲労」かもしれません。

 

低血糖対応策…適度な糖質補給を

 

適切な対応策としては、とりあえず糖質の補給を少量ずつ頻繁に行うことです。一度にたくさん食べることは控えましょう。寝る前にも、長時間血糖値を維持しやすいでんぷん、ハチミツなどを少量摂取すると有効です。

 

ヒトは肝臓などでアミノ酸から糖を作り出す能力(糖新生)がありますので、日ごろからお肉や卵などタンパク源からアミノ酸をしっかり摂っておくことも重要です。さらに疲れた副腎を癒すためには、ビタミンCやマグネシウムといった栄養素も有用です。

 

そしてなによりも、過剰なストレスの緩和、あるいはストレスに対する受け止め方の改善などが重要となります。

 

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※本記事は、最先端の「自分磨き」を提供するウェルネスメディア『KARADAs』掲載の記事を転載したものです。