日本において同年齢の所得格差は縮小傾向にあるといわれていますが、20~30代の若年層の所得格差は拡大しているといわれています。内閣府や厚生労働省の資料から、格差の実態をみていきます。
平均給与389万円…「そんな年収で結婚できない!」20代会社員の悲痛 (※写真はイメージです/PIXTA)

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20代後半から30代前半の若年層で所得差が拡大

内閣府が発表した『日本経済2021-2022 成長と分配の好循環実現に向けて』で言及されている所得格差。数値が大きいほど所得格差が大きいことを示す「ジニ係数」は、近年緩やかに下落しており、格差は縮小傾向にあるとしています。

 

また年齢別では、年功序列の傾向が強い日本では、年齢があがるにつれて格差は広がる傾向にありますが、各年代で格差は縮小傾向にあるものの、25~34歳は拡大傾向にあるとしています。その要因としてあげているのが、男性の非正社員比率が上昇し、労働時間が減少したことをあげています。

 

さらにこの年代では、単身世帯の中央値が360万円と、5年間でほぼ変化はありませんでした。一方、夫婦のみ世帯では5年で81万円増加の616万円、夫婦と子どものいる世帯では5年で57万円増加の550万円となりました。

 

この変化の要因といえるのが共働き夫婦の増加。結果、世帯年収500万円未満層の割合が低下する一方で、800万円以上の層が上昇。1,000万円以上、いわゆる「パワーカップル」といわれる層も上昇しています。

 

若年層の間で所得格差が拡大している現状。年収300万円台の単身会社員の間では「低収入で結婚できない」という人たちが増加し、晩婚化、少子化を助長させていると考えられます。また夫婦層では年収500万円あたりが子どもを持つか持たない(持てない)かのひとつの境界線。共働きで世帯年収をあげることができれば、子どもを持つという選択肢が広がるとしています。

男女別、学歴別、企業規模別…若年層の給与格差の実態

所得格差が広がっているといわれる若年層。厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、平均給与(男女計、学歴計)は20代後半で389万6,000円、30代前半で441万4,000円です。では立場によって、どれほどの格差が生じているのでしょうか。

 

まず男女別にみていくと、20代後半で50万円強、30代前半で100万円弱の差が生じています。次に高卒か大卒かでみていくと、20代後半で70万円強、30代前半で100万円強の差でした。

 

さらに企業規模別、従業員規模10~99人企業と1,000人以上規模でみていくと、20代後半で100万円弱、30代前半で120万強の差。正社員か、非正社員かでみていくと、20代後半で130万円、30代前半で182万円の差が生じています。


 

■男女別給与差

「25~29歳」男性410万4,000円/女性359万9,000円

「30~34歳」男性475万6,000円/女性377万8,000円

 

■学歴別給与差

「25~29歳」高卒351万4,000円/大卒422万4,000円

「30~34歳」高卒388万0,000円/大卒495万4,000円

 

■企業規模別給与差

「25~29歳」従業員10~99人企業335万8,000円/従業員1,000人以上企業429万3,000円

「30~34歳」従業員10~99人企業376万7,000円/従業員1,000人以上企業500万5,000円

 

■雇用形態別給与差

「25~29歳」正社員403万2,000円/非正社員273万2,000円

「30~34歳」正社員461万8,000円/非正社員279万0,000円

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より算出

 

若年層と一括りにしても、立場の違いで大きな格差が生じていることは明らかです。

結婚へと踏み切れる年収のボーダーライン

SMBCコンシューマーファイナンスによる『20代の金銭感覚についての意識調査2022』では、年収によって「結婚しようと思えるか、思えないか」を聞いています。それによると、年収400万円あれば、36.3%、約3人に1人が「結婚しようと思える」と回答。年収500万円であれば51.9%と過半数を超え、年収600万円であれば62.5%に達します。

 

年収500万円が結婚に向けてのひとつのハードルだといえるでしょう。ちなみに年収がどんなに多くても結婚したいと思えない」という人は13.8%と、一定数、結婚は考えられないという人がいます。

 

そもそも年収500万円超えを実現できる若年層はどれほどいるのでしょうか? 前出の厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』の給与分布でみていくと、20代後半でたった6%、30代前半で15%ほどとごくわずかです*。

 

*賞与平均2.9ヵ月から、月給「34万~36万円未満」以上と想定

 

結婚適齢期といわれる、20代後半から30代前半の若年層。生涯未婚率も上昇傾向にありますが、共働きでないと結婚に踏み切れない、という低所得が要因のひとつだと考えられます。給与の上がらず、希望を持ちにくい今の日本。共働きか、片働きか、それぞれが選択できるほどの給与が得られる社会にすることが、問題解決に向けての第一歩だといえそうです。