今年の10月、厚生年金の適用要件が拡大されます。「正社員」と「非正社員」で大きな格差があるケースが多かったですが、そんな格差も縮小の傾向にあります。しかしすべての問題が解決するのかといえば、そう簡単なものではないようです。みていきましょう。
平均給与326万円…正社員になれなかった日本人の「無残な老後」 (※写真はイメージです/PIXTA)

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10月~適用要件拡大で「働く人=厚生年金」の時代へ前身

日本に住む20~60歳未満全員の加入が義務付けられている国民年金、会社員や公務員が加入する厚生年金と2階建て構造に例えられることが多い日本の公的年金。厚生年金に加入している人は、基礎年金と厚生年金の2つの合計金額を受け取ることができ、専業主婦(夫)の保険料は厚生年金に加入している人が負担しています。

 

厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給者平均年金額は月額5万6,358円、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金額は月額14万6,145円でした。男女別にみてみると、国民年金は男性5万8,866円、女性5万3,699円。厚生年金は男性16万4,770円、女性10万3,159円です。

 

国民年金だけが受給される人と、厚生年金も受給される人で、平均値の単純計算で10万円程度の差があるわけですから、会社員であれば厚生年金に加入したいもの。ただ「自分は正社員じゃないから……」と、厚生年金に加入できない人もいるでしょう。

 

厚生労働省『労働力調査』(2021年)によると、「正規の職員・従業員(以下、正社員)」は3,565万人、「非正規の職員・従業員(以下、非正社員)」は2,064万人。非正社員について細かくみていくと、半数を占めるのが「パート」で1,018万人、「アルバイト」が438万人、「派遣社員」が140万人、「契約社員」が275万人、「嘱託社員」が113万人となっています。

 

あえて非正社員という人もいるでしょうが、仕方なく非正社員と正社員の間には年金の不公平感がありました。そこで、厚生年金の適用の拡大が進んでいます。正社員に限らず、短時間労働者にも厚生年金のカバー範囲が広がるのです。

 

今年10月、企業規模は従業員数500人超の企業を対象ですが100人規模に、対象となる人の勤務期間は「1年以上」から「2ヵ月以上」に短縮となります。

 

【厚生年金の拡大要件】

◆2016年10月~

事業所の規模:常時500人超

労働時間:週の所定労働時間が20時間以上

賃金:月額88,000円以上

勤務期間:継続して1年以上使用される見込み

適用除外:学生ではないこと

 

◆2022年10月~

事業所の規模:常時100人超

労働時間:週の所定労働時間が20時間以上(変更なし)

賃金:月額88,000円以上(変更なし)

勤務期間:継続して2カ月を超えて使用される見込み

適用除外:学生ではないこと(変更なし)

 

◆2024年10月~

事業所の規模:常時50人超

労働時間:週の所定労働時間が20時間以上(変更なし)

賃金:月額88,000円以上(変更なし)

勤務期間:継続して2カ月を超えて使用される見込み(変更なし)

適用除外:学生ではないこと(変更なし)