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「入試制度」ごとの学生の成績を比較してみると…
モチベーションは学力に依存すると考えられるが、わずかなきっかけで簡単に崩れる性質を持っているとも言える。これに関連して、興味深い調査研究があるのでいくつか紹介しよう。
倉元直樹と大津起夫は、2000~09年度におけるAO・推薦・一般の3種の入試制度と、それぞれの入試制度を経て入学した学生の学籍状況(除籍・退学・留年)と成績状況との関連性を、東北大学の有効データ23,270名分を使って調べた。その主要な結果は以下の通りである。
・退学等の割合は、【一般後期】18.1%、【AOⅢ期】11.5%、【推薦Ⅱ】10.1%の順で高かった。
・開講科目における成績と修得単位数の状況は、推薦やAO入試を経て入学した学生の方が良好だった
この結果を見ると、一般入試ではなくAO入試や推薦入試で入学した学生は成績状況がよく、その結果ストレートに卒業できている傾向が強いこと、その反面、それらの学生の中で除籍や退学した者の割合も決して低くはないことが分かる。
追跡調査で判明した「好成績を修める学生」の特徴
西郡大は『大学入試研究ジャーナル』誌上に創刊(1991年3月)から2010年までに掲載された121本の追跡調査をレビューし、入試制度と入学後の学業成績などとの関連性についての傾向的結論についてまとめている。
その一部を抜粋すると以下の通りである。
・好成績を修める学生の特徴は入試成績の上位者ではなく、むしろ入学後のモチベーションや勉学に対する高い意識をもつ学生である。
・AO入試を経て入学した学生の学業成績は他の入試制度を経た学生と遜色なく、むしろ他の入試制度に比べて高い学習意欲や積極性をもって入学する傾向にある。
「主体性・多様性・協働性」が評価された入学者は…
大塚智子らは、2003~04年度および2007年度に高知大医学部医学科に入学した学生を対象に興味深い追跡調査を行った。高知大学医学部医学科のAO入試では、2002年度より第2次選考で実施される課題解決学習(ProblemBasedLearning:PBL)を通じて「主体性・多様性・協働性」という情意領域を評価し、それにもとづいて入学者を選抜している。
大塚らは、医師国家試験合格後に臨床研修を受ける際の指導教員に対して指導学生の情意領域に関するアンケート調査を行い、その調査結果とAO入試で入学した37名の入学時点の情意領域評価との相関を調べた。その結果、両者の間に中程度の正の相関が観察された。
そして、AO入試で入学した37名とその他の入試制度で入学した47名との間で情意領域の評価の差異を検証したところ、「チーム医療」に属する項目についてAO入試入学者の方がその他の入試入学者よりも有意に高かった。
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中村 勝之
山口県下関市出身。大阪市立大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得退学。桃山学院大学経済学部教授。専門は理論経済学。著書に『大学院へのミクロ経済学講義』(2009年、現代数学社)『〈新装版〉大学院へのマクロ経済学講義』(2021年、現代数学社)『シリーズ「岡山学」13 データで見る岡山』(共著による部分執筆、2016年、吉備人出版)がある。