賃金を上げられない…経営者の本音
物価が安定しているとはいえ、値上げラッシュに消費者は霹靂。「給与は上がらないのに、モノの値段ばかり高くなって……」とため息をついてしまうのも、無理のない話です。
国税庁『民間給与実態統計調査』によると、最新調査2020年の会社員の平均給与は433万0,000円。前年比0.8%の減でした。時系列でみていくと、会社員の平均給与の最高値は、今から25年ほど前の1997年。467万3,000円を記録したときでした。
その後、バブル崩壊による不良債権問題が本格化。日本では潰れるはずがない、といわれていた都市銀行や証券会社が次々と破綻し、会社員の平均給与も減少へ。その後、ITバブル崩壊、リーマンショックと、日本経済はどん底へと落ちていき、2009年、405万9,000円と、1980年代後半の水準である400万円を切るところまで下落しました。昨今はアベノミクスの効果もあり、上昇基調にありましたが、1997年当時と比べて、30万円ほどの開きがあります。
なぜ、日本人の賃金はこんなにもあがらないのでしょうか。その要因のひとつといわれているのが、非正規雇用数の増加。企業は近年、固定費削減の一環として、正社員雇用を敬遠する傾向にあります。しかも派遣であれば即戦力も望めるという側面も。同時期に終身雇用制から実力主義をうたう企業も増え、比較的自由に働くことのできる派遣社員などの非正規雇用をあえて選ぶ人も増加しました。さらに派遣法や改正労働契約者法など、非正規雇用の労働環境は改善傾向にあり、「正社員でなくても……」と考える人も増えているのです。
では企業は、人事を削減した分、正社員の賃金にまわしているのか、といえばそうでもなく、内部留保というカタチで膨れ上がるばかりです。最悪の経験をしてきた日本企業、なかなか、慎重姿勢を崩せません。
またバブル期のような浮かれた世の中を経験しないことには、頑なな日本企業の姿勢を崩せないかもしれません。