日本人の100人に1人以上が生活保護を受けている
コロナ禍によって給与が減ったり、失業したりして、生活が行き詰まってしまう人が増えています。厚生労働省『令和2年度被保護者調査』によると、生活保護を受けている被保護世帯は161万6884世帯、被保護人員は202万6730人。単純計算、日本人の100人に1.6人が生活保護を受けている計算になります。
【年齢階級別「生活保護」被保護人員】
0~19歳:19万4,469人
20~29歳:5万3,509人
30~39歳:9万5,709人
40~49歳:19万3,747人
50~59歳:27万4,385人
60~64歳:16万0,321人
65~69歳:21万5,106人
70歳以上:83万9,475人
そもそも生活保護とは、日本国憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づいて制定された制度。最低限の生活を送ることを保証することと、自立の助長を図ることが目的で、日本国民であれば誰もが申請できる権利があります。
相談や申請は、住んでいる地域を所管する福祉事務所の生活保護担当。福祉事務所を設置していない町村の場合は、町村役場でも申請の手続きを行うことができます。
生活保護を受けるためには、以下のような要件がいわれています。
◆保護の要件等
生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。
(資産の活用とは)
預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充ててください。
(能力の活用とは)
働くことが可能な方は、その能力に応じて働いてください。
(あらゆるものの活用とは)
年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください。
出所:厚生労働省『生活保護制度』より抜粋
生活保護に関して、色々と誤解し、申請をためらうケースがあります。たとえば「持ち家だから申請ができない」というもの。「利用しうる資産を活用すること」は保護の要件ですが、居住用の持ち家は保有が認められる場合があります。また自動車は原則処分ですが、通勤用の自動車を持ちながら求職している場合は、処分しないまま保護を受けることができる場合があります。
また「扶養義務者の扶養は保護に優先する」とされていますが、たとえば同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということではありません。また必要書類が揃っていなくても申請はできます。
生活保護、いくらもらえるのか?
生活保護で受けることができるのは、以下の8種類の扶助です。
- 生活扶助
- 住宅扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
- 出産扶助
- 生業扶助
- 葬祭扶助
実際に生活保護を受給することになったら、毎月収入状況の申告が必要となるほか、年数回程度、福祉事務所のケースワーカーが訪問調査を行います。支給される生活保護費は最低生活費から収入を差し引いた金額。最低生活費とは、国によって定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営むため」に必要な金額であり、世帯人数や居住地などでも異なります。
最低生活費と収入と比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。実際にどれほどの生活保護費を受給できるか、計算してみましょう。
たとえば、40代独身で「東京都足立区」在住の場合、13万円強。「神奈川県相模原市」在住では、11万円強となります。
【「40代独身」生活保護費の例】
[足立区在住の場合]
生活扶助:7万6,310円
住宅扶助:5万3,700円
合計:13万0,010円
[相模原市在住の場合]
生活扶助:7万3,720円
住宅扶助:4万1,000円
合計:11万4,720円
※上記はあくまでも試算結果であり、決定額ではありません
同じように小学生1人を抱える母子世帯の場合を考えてみましょう。足立区在住であれば21万円強、相模原市在住であれば19万円強ほどになります。
【「小学生1人の母子世帯」生活保護費の例】
[足立区在住の場合]
生活扶助:12万1,970円
児童養育加算:1万0,190円
母子加算:1万8,800円
住宅扶助:6万4,000円
合計:21万4,960円
[相模原市在住の場合]
生活扶助:11万7,900円
児童養育加算:1万0,190円
母子加算:1万8,800円
住宅扶助:4万9,000円
合計:19万5,890円
※上記はあくまでも試算結果であり、決定額ではありません
生活保護に関しては「所有できる物・住む場所・お金の使い方が制限される」「ローンを組めない」「クレジットカードが作れない」など、デメリットとされることがあり、さらに、色々な批判的な声も少なくありません。そのため申請には、二の足を踏む人も多いようです。
ただ生活保護は自立の助長を図ることが目的。困窮からどうにかしたいと願うなら、まずは相談してみることが重要です。