現行の生活保護制度は給付水準がかなり高めに設定されており、生活保護者たちを「働かせる気がない」といえる。ここでは、どうすれば改善できるのかについて、前日銀副総裁・岩田規久男氏が解説する。 ※本連載は、書籍『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「生活保護を受けているほうがはるかに楽」…「貧困のワナ」に陥る日本社会からの脱却 ※写真はイメージです/PIXTA

「貧困のワナ解消」「生活保護費節約」のための案

しかし、2014年度の改正でも雇用保険受給対象者向けとそれ以外の人向けが別々のコースとして提供されており、相互乗り入れができない。

 

これは、前者がハローワークの管轄下にあり、後者が厚生労働省の地域の労働局の管轄下にあるためであろう。

 

このような縦割り行政の壁を取り払って、稼働能力のある人はどちらが運営するコースも受講できるようにすれば、彼らの選択肢は拡大し、就職支援としてより効果的なものになるであろう。

 

以上のように改革すると、生活保護制度は稼働能力のない人またはそれに近い人だけが対象になる。

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生活保護制度の対象者は障害者と貧困の高齢者世帯に限定され、「稼働能力のある人でも、生活費保護世帯になると、そこから抜け出せない」という「貧困のワナ」に陥ることを防止でき、税負担の生活保護費も節約できるであろう。

 

 

※ 八田達夫(2009)『ミクロ経済学Ⅱ 効率化と格差是正』東洋経済新報社

  鈴木亘(2012)『年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革』日本経済新聞出版社

 

 

岩田 規久男

前日銀副総裁