(※写真はイメージです/PIXTA)

自分の歯と同じ感覚で噛むことができ、長期にわたって使用できるといわれるインプラント……しかし、せっかく埋入しても「インプラント周囲炎」になり、インプラントを抜かざるをえなくなってしまう人も少なくありません。インプラント周囲炎の正しい知識と予防法について、世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める東京国際クリニックの清水智幸院長が解説します。

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「インプラントは歯周病にならない」は大間違い!

インプラント治療は、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上部にセラミックなどでできた人工歯冠を装着することで、噛む機能を回復させる治療のことです。

 

メリットが多い治療法のひとつですが、歯を残せる可能性があるにもかかわらず「歯周病は治らない」と診断され、歯周病が治っていない状態でインプラントを埋め入れるのは非常に大きなリスクを伴います。

 

歯周病に侵されていると、その菌がインプラントの周囲に感染して「インプラント周囲炎」という病気にかかってしまうリスクが高くなるからです。

 

そして、インプラント周囲炎になると、非常に高い確率でインプラントに不具合が起こり、進行するとインプラントを抜かざるをえなくなってしまいます。

「インプラント周囲炎」とは?

インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲に生じる、歯周病に類似した病気です。そもそも歯周病とは細菌による感染症で、プラーク(歯垢)と呼ばれる細菌の塊が毒素を発して歯茎に炎症を起こします。

 

症状が進行すると、歯を支える骨が溶けて歯がぐらぐらと揺れ、支えを失った歯は自然に抜け落ちてしまいます。インプラント周囲炎も、治療しないで放置していると歯茎から出血や排膿が起こり、最終的にはインプラント周囲の骨がなくなることでぐらぐらと動揺するようになり、インプラントを抜かざるをえなくなります。

 

原因やメカニズムは歯周病と同じですが、インプラント周囲炎は「炎症を起こしにくい」、「出血しにくい」、「痛みがない」、「かなり進行しても不自由なく食事ができる」など、歯周病以上に気付きにくい厄介な病気です。加えて進行するのが非常に速く、症状が出た時にはかなり重症化しているというケースが多々あります。

 

インプラント周囲炎の進行が速い理由は、インプラントが人工物だからです。インプラントは物理的な強度においては天然歯より優れていますが、人工物ゆえに人間本来の免疫が有効に機能せず、細菌に対する抵抗力は弱いという弱点があります。

 

顎の骨が失われるスピードは、通常の歯周病で0.1~0.2mm/年ですが、インプラント周囲炎はその10~20倍の速度で骨を溶かしてしまうのです。

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。