コロナ禍による外出制限、リモートワークの普及による通勤客の減少、インバウンド需要の消失……大打撃を受けている運輸業。そんな業界で働く会社員の給与事情とは? みていきましょう。
関東私鉄8社の平均給与…「東急」「東武」「西武」東京を走る鉄道会社の給与額 (※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍の関東私鉄8社…売上高20~50%の減少

また売上高もみてみましょう。まずは個別決算に注目。最も売上高が高いのは「東武鉄道」で1,676億円。一方でコロナ禍で最も売上を落としたのが「東急電鉄」で前年比-49.4%でした。

 

次に連結決算をみると、最も売上高が高いのが「東急電鉄」で9,359億円。一方でコロナ禍で最も売上を落としたのが「西武鉄道」で前年比-39.2%でした。

 

【関東私鉄8社「売上高」2020年】

■東急電鉄 1,124億円(-49.4%)/9,359億円(-19.6%)

■東武鉄道 1,676億円(-27.9%)/4,963億円(-24.0%)

■小田急電鉄 1,143億円(-33.5%)/3,859億円(-27.7%)

■西武鉄道 1,109億円(-24.4%)/3,370億円(-39.2%)

■京王電鉄 1,015億円(-21.1%)/3,154億円(-27.2%)

■京急電鉄 876億円(-34.5%)/23,49億円(-24.8%)

■京成電鉄 557億円(-35.1%)/2,077億円(-24.3%)

■相鉄 256億円(-23.8%)/2,211億円(-16.5%)

 

出所:出所:一般社団法人日本民営鉄道協会発表より

※数値左:個別決算、数値右:連結決算、(かっこ)内前年比増減

 

通勤客が多いのか、観光客が多いのかなどといった沿線の特徴や、鉄道以外の事業の展開などで、私鉄各社が受けたコロナ禍の影響の度合いは異なりますが、どこも厳しい局面になっているのは共通することのようです。

関東私鉄8社の給与事情…全業界平均を上回る高水準

そんな私鉄各社の給与事情をみていきましょう。厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』で産業別の給与を確認していきます。鉄道業者が分類される「鉄道業」の平均年収は635万2,000円。全産業平均が487万3,000円なので、平均を大きく上回る業種であることが分かります。

 

さらに有価証券報告書から、関東私鉄8社の給与事情をみていきます。ただし8社のうち「東急」「西武」「相鉄」は事業持ち株会社なので、残り5社で比較すると、「小田急電鉄」が最も平均給与が高く、720万3,661円。「京成電鉄」が714万9,562円で続きます。

 

■東急株式会社

762万7,305円

(従業員数:1,461人、平均年齢:42歳7ヵ月、平均勤続年数:15年6ヵ月)

 

■株式会社西武ホールディングス

802万2,366

(従業員数:306人、平均年齢:40.4歳、平均勤続年数:15.1年)

 

■東武鉄道株式会社

669万8,182円

(従業員数:3,531人、平均年齢:46.9歳、平均勤続年数:25.7年)

 

■小田急電鉄株式会社

720万3,661円

(従業員数:3,760人、平均年齢:40.3歳、平均勤続年数:19.3年)

 

■京王電鉄株式会社

680万4,893円

(従業員数:2,531人、平均年齢:40.7歳、平均勤続年数:17.6年)

 

■京浜急行電鉄株式会社

679万0,775円

(従業員数:2,859人、平均年齢:38歳11ヵ月、平均勤続年数:16年6ヵ月)

 

■京成電鉄株式会社

714万9,562円

(従業員数:1,828人、平均年齢:40.8歳、平均勤続年数:17.7年)

 

■相鉄ホールディングス株式会社

878万5,172円

(従業員数:89人、平均年齢:49.4歳、平均勤続年数:20.8年)

 

業界としては高い給与水準の鉄道業界ですが、コロナ禍の影響は大きなダメージとなっているよう。先日、東急電鉄が運賃改定を行うと発表し、運賃改定率は12.9%、初乗り運賃は10円値上げで140円となり、そのほかの区間でも1割程度値上げとなります。その背景としてあがったのが、コロナ禍を契機として定期利用者が激減し、今後も需要回復が見通せないことをあげました。

 

鉄道業は巨額の設備投資が必要。短期的には黒字を確保できたとしても、このままでは事業継続が困難だという判断でした。今後、他社も追随する可能性もあり、家計の負担増も避けられないかもしれません。