「東北はねえ、冬はいるだけでお金がかかるんですね」
他にも私がこれまでに出会った年金生活者で、移住を決めた理由に気候条件を挙げる人は多かった。
「本当に寒がりで、冬眠したいぐらい寒いのが苦手です。私は血圧が高いんですね。日本では高い時は200を超えていました。通常は上が160で、下が80〜90ぐらい。日本では降圧剤を朝晩飲んでいました。でもフィリピンでは上がっても140ぐらいですから、高血圧にとって気候はかなり大きいです」(60代女性、フィリピン在住2年)
「こっちは暖かいから関節が痛くないですよね。フィリピンに来た方はみんな言いますよ。暖かいから痛くなくなったって」(60代男性、フィリピン在住2年)
「東北はねえ、冬はいるだけでお金がかかるんですね。暖房費だけでもバカにならない。フィリピンへは父と一緒に来たんです。毎冬、父は布団から起きられなかったですから」(50代男性、フィリピン在住1年)
そんな高齢者たちにとって、温暖な南国は「楽園」のイメージを与えてくれるのかもしれない。
水谷竹秀
ノンフィクションライター
1975年三重県生まれ。上智大学外国語学部卒業後、カメラマン、新聞記者などを経てフリーに。
2011年『日本を捨てた男たちフィリピンに生きる「困窮邦人」』(集英社)で開高健ノンフィクション賞受賞。他に『だから、居場所が欲しかった。バンコク、コールセンターで働く日本人』(集英社)など。
10年超のフィリピン滞在歴をもとに、「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材している。