専門家の立会わない出産「無介助分娩(プライベート出産)」は国の政策やガイドラインによる規制があるにも関わらず、年々増加傾向にあります。本記事では、助産師の市川きみえ氏の著書『私のお産 いのちのままに産む・生まれる?』より一部抜粋・再編集し、「無介助分娩(プライベート出産)」経験者の声を紹介します。
第1子は病院で出産したが…あえて「プライベート出産」を選択した妊婦の経験談 (※画像はイメージです/PIXTA)

 

反復帝王切開を回避したC・Bさん

 

C・Bさんは、2003年に帝王切開で出産し、その後2006年から2013年の間に第2子~第4子の3人の子どもをプライベート出産しています。

 

第1子を帝王切開で出産したC・Bさんは、1度帝王切開で出産すると次の出産も帝王切開が適応になることを知ったうえで自然出産を望みました。C・Bさんは第1子の出産は、助産所を希望していましたが、前置胎盤のため病院で帝王切開による出産となりました。

 

その出産は予定日の1か月半前からの入院で安静を強いられました。入院後、医療者と良い関係を築くために良い患者としてふるまっていましたが、帝王切開の日程は十分なインフォームドコンセントを得られず、納得のいかないまま決められてしまいました。入院後帝王切開の翌日までの状況を振り返り、次のように語っています。

 

「いざこざが起きて信頼関係を失うよりも、言うこと聞いて産みましょうと思って。その時は良い患者になったほうが(良いと思った)……」

 

「“(医師から手術日は)毎週月曜日ですから36週に入ったら、産めるから”みたいな、“そんなに早く?”と言ったら“陣痛が来てからでは遅いんです!”と言われて。結局そんなんで、レールに乗っかって産んでしまったんですよ。(帝王切開の翌日は)痛くて痛くてもう子ども産んだ気持ちにもなれなくて……」

 

このような出産体験は育児に影響しており、それを目の当たりにしていた夫が積極的に出産・育児に関する情報を収集し、夫婦で自然出産の重要性を深く学び合いました。

 

第2子の出産は帝王切開を避けたいものの、近隣には帝王切開後に経腟分娩できる病産院はないし、助産所でも出産できないという情報を得ており、プライベート出産を選択するに至りました。そして、一度も妊婦健診を受けずプライベート出産しています。なぜ、妊婦健診さえ受診しなかったのかについて、C・Bさんはこのように語っています。

 

「病院に行ったら、帝王切開しましょうって、まず言われるやろうし、そこで争ったり話し合ったり、そこにエネルギーを消耗するつもりもなかった」

 

このように、C・Bさんは、第1子の出産時に医療者と信頼関係を築きたいと思いつつ、うまくコミュケーションが取れず、辛い体験となったことから、あえて医療を避け夫と2人だけの出産に臨みました。

 

C・Bさんの語りから、出産時に十分なインフォームドコンセントがなされないままに医療介入を受けることで、いかに女性が傷つくか、またその心理体験は育児に影響することがわかります。そして、そういった出産や育児の体験は、次子の出産選択につながっていくのです。

 

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市川 きみえ

助産師

清泉女学院大学大学院看護学研究科・助産学専攻科・看護学部看護学科 准教授

1984年大阪市立助産婦学院卒業。大阪市立母子センター勤務の後、医療法人正木産婦人科にて自然出産・母乳育児推進に取り組み、2011 年より助産師教育・看護師教育に携わっている。2010年立命館大学大学院応用人間科学研究科修士課程修了 修士(人間科学)。2018年奈良女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了 博士(社会科学)。2021年より現職。

著書に『いのちのむすび─愛を育む豊かな出産』(晃洋書房)がある。