欧米の20~30代を中心に、労働に縛られ続けない人生「FIRE(Financial Independence Retire Early)」が話題となり、国内でも副業や投資による資産形成意識が高まっています。「不動産投資」でサラリーマンを辞めることは実際に可能なのか、リズム株式会社の資産コンサルタント、山崎博久氏が解説します。
サラリーマン大家は「いくら家賃収入があれば」会社を辞められるのか?【資産コンサルタントが解説】

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もし会社を辞めたら…その後の生活をシミュレーション

「投資で資産を築いて、早期リタイアを……」そんな夢をみて、不動産投資に興味を持つ人もいるでしょう。しかし実際のところ、不動産投資で得られる収入だけで暮らせるようになるものなのでしょうか。

 

専業の不動産投資家になってサラリーマンを辞めるには、サラリーマンとして勤務しているときと同等もしくはそれ以上の収入を不動産投資で稼ぐ必要があります。それにはどの程度の投資規模が必要になるのかをイメージしていただくために、サラリーマンを辞めることを想定したシミュレーションをしてみましょう。

 

サラリーマンを辞めると…税金や保険料はどうなる?

サラリーマンが毎月手にしている給料は、純粋に会社から支払われた報酬ではありません。そこから税金や年金、保険料などが差し引かれた金額が手残りとして支払われています。もちろんサラリーマンを辞めると、こういった天引きはなくなりますが、その代わりに自分で税金や社会保険に関するお金を支払う必要があります。

 

おおむね以下のように変化することをイメージしておいてください。

 

 

サラリーマンの場合は上記のように給料天引きが基本ですが、辞めると年金や保険に自分で加入し、自分で払うのが基本になります。

 

不動産投資家になると節税の余地が生まれるため、税金面ではオトク感があるかもしれませんが、年金は厚生年金だと会社が保険料の半分を支払ってくれていたメリットがなくなるため、負担増となる可能性が高いでしょう。

 

サラリーマンを辞めると…投資家としての年間所得はどれくらい?

サラリーマンを辞めて専業不動産投資家になったら、いったいどれくらいの収入が得られるのでしょうか。ここではよくある3つのパターンでシミュレーションしてみましょう。

 

シミュレーション①:月額家賃8万円のワンルームマンションを7戸所有

月額家賃8万円のワンルームマンションを東京都内に持っていると仮定します。単純計算すると、

 

8万円×12ヵ月=96万円

 

なので、これを7戸所有することで年間の家賃収入は672万円になります。

 

ただし、家賃収入のすべてが所得になるわけではありません。ここから、維持管理に必要な管理費、修繕積立金、修繕費用が引かれるほか、固定資産税・都市計画税、保険料なども発生します。

 

こうした費用には「物件価格の2割程度」という大まかな目安があるので、それを考慮すると年間の収入は、

 

672万円×80%=537万6,000円

 

となりました。

 

また、常に満室稼働になるわけでもなく、空室が出た時はその分の家賃収入はありません。融資を利用している場合はローン返済も考慮する必要があります。ワンルームマンションを7件所有した場合の年間収入は400万円から500万円の間になるでしょう。まずはこの大まかな費用感をイメージしてください。

 

シミュレーション②:家賃7万円、6室の一棟アパートを2棟所有

それでは次に、区分マンションではなく一棟アパートのシミュレーションをしてみましょう。6室ある一棟アパートを2棟所有しているケースを想定しました。それぞれの部屋は家賃が7万円とします。

 

7万円×12ヵ月×6室=504万円

さらに同様の物件が2棟あるので、

504万円×2棟=1,008万円

 

2棟あるアパートがいずれも満室稼働になったとすると、年間の家賃収入は1,000万円を超えます。ここから目安となる2割の諸経費を差し引くと年収は800万円前後になると見積もることができます。

 

このレベルになると、専業不動産投資家として満足できる収入レベルと呼べる金額がみえてきます。

 

シミュレーション③:家賃10万円、20室の一棟マンションを1棟所有

3つめのシミュレーションは、一棟マンションです。物件価格が最も高額になりますが、収入モデルはどのようになるのでしょうか。

 

10万円×12ヵ月×20室=2,400万円

 

ここで遂に2,000万円の大台を超えました。こちらも目安となる2割の諸経費を差し引いてみると、1,920万円になります。これだけの一棟マンションを保有するためには億単位の投資が必要になりますが、その分収入も大きくなることが分かります。