本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月7日に公開したレポートを転載したものです。
株式インデックス投資、何が良いか…先進国株、新興国株、米国株と日本株、どれを選ぶ? (写真はイメージです/PIXTA)

株価下落直前に100万円を投資した場合、その後どうなる?

実際に、上記の株式インデックスを使って長期投資をする場合はどうなるか?

 

仮に100万円を日本バブル崩壊直前、ITバブル崩壊直前、リーマン・ショック直前、コロナ・ショック直前に一括投資し、2021年9月末まで保有していたら、100万円がいくらになったかを見てみよう。

 

[図表2]最終残高と年率利回り
[図表2]最終残高と年率利回り

 

図表2を見ると、金融・経済危機直前という最悪のタイミングで株式インデックスに投資を開始したとしても、長期保有をすると、最終残高が元本100万円を大きく上回ることが分かる。

 

例えば、日本バブル崩壊直前の1990年年初にナスダック100に100万円投資し、2021年9月末まで31年9カ月持ち続けたとすると最終残高は5,967万円と60倍近くになっている。実際は各種コストがかかるので、多少はこれよりは少なくなるが、極めて大きな金額となっている。

 

ITバブル崩壊直前の2000年3月にダウ平均株価に100万円投資し、21年6カ月持ち続けたとすると最終残高は563万円、リーマン・ショック直前の2007年11月にナスダック100に100万円投資し、13年10カ月持ち続けたとすると、最終残高は730万円になっている。

 

一方、ITバブル崩壊直前に日経平均株価に100万円投資した場合で、最終残高は206万円と21年間も投資して2倍くらいにしかなっていない。リーマン・ショック直前に日経平均株価に100万円投資した場合はおよそ13年で最終残高が228万円に増えているが、米国株式には見劣りする。

まとめ

家計の金融資産構成について日米を比較すると、2021年3月末時点の現預金(日:54.3%、米:13.3%)と投信・株式(日:14.3%、米:51.0%)の比率がまさに正反対である。特に日本は家計の預貯金額は総額1,000兆円を超えており、リスク回避傾向が非常に強いことが分かる。

※ いずれも2021年3月末のデータ。2021年8月20日の日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」より。

 

しかし、低金利環境が続いている中、預貯金以外の資産形成手段として、株式インデックス投資が非常に有効である。

 

過去のデータを見る限り、結論として以下のことが言える。

 

〇投資後に価格が下がっても慌てて売ることなく、辛抱強く持ち続け、価格上昇を待つ長期投資が良い。但し、老後が近くなった段階で、価格が上がり、十分満足できる資産が形成できたら、躊躇なく売却することもとても重要である。

 

〇株式インデックスとしては、米国株式(ナスダック100、S&P500、ダウ平均株価)、米国株式が7割以上を占める先進国株式(MSCIコクサイ)などをはじめ、収益力、成長力が期待できるインデックスが良い。尚、インデックス投資ではリターンは同様なので、コストが安いものを選ぶべきである。

 

〇当然ながら、投資においては分散投資が重要だが、最近の傾向として各種株式インデックスの値動きの連動性が高まってきており分散投資のメリットは小さい。一方、国内債券投資は利回りが低すぎるため、投資するメリットは小さい。長期的な資産形成のための資金であれば、株式インデックス投資をメインに投資するのが良い。

 

尚、株価下落直前という最悪の条件に一括投資していた場合でも株式インデックス投資メインが良いのだから、最悪期に限らず、株価下落後の最良期にも投資する積立投資ならばなおのこそ、株式インデックス投資をメインに投資することをお勧めする。

 

加えて、これから人生100年時代の資産形成を考えて株式インデックスに投資する場合には、税制上の優遇措置がある「確定拠出年金(企業型や個人型のiDeCo)」や「つみたてNISA」を利用すべきである。

 

さらに余裕がある場合は特定口座で株式インデックス投資から始め、慣れてきたらアクティブ型の投資信託に投資するのも良い。まずは、手元に資金があれば、勇気を出して、株式インデックスに投資してみてはどうだろうか。

 

 

熊 紫云

ニッセイ基礎研究所

 

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