本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月7日に公開したレポートを転載したものです。
株式インデックス投資、何が良いか…先進国株、新興国株、米国株と日本株、どれを選ぶ? (写真はイメージです/PIXTA)

【関連記事】株式インデックスに積立投資をしたら、どれくらい増えるのか…先進国株式、新興国株式、米国株式、日本株式で比較してみた。

はじめに

資産形成は自助努力が求められる流れになってきた。2019年6月に、金融庁の金融審議会で報告された「老後資金の2,000万問題」が世間で大きな物議を醸した。

 

資産形成の手段には預貯金、債券、株式、投資信託、不動産などがある。しかし、現状、預貯金は安全性が高いが、低金利環境で収益性はゼロに近い。個人向け国債も元本割れリスクがないものの、低金利で収益性が低い。

 

一方で、株式は価格変動リスクがあるが、収益性が高く、分散や長期投資等でリスクを抑制することもできるため、長期の資産形成に向いている。

 

株式に投資する方法はいくつかある。まず、株式の個別株に投資する場合は、一定以上の金融知識が求められ、リスク軽減のために多くの銘柄へ分散投資するには相当な金額が必要となり、投資の初心者にはハードルが高い。

 

一方で、投資信託を活用すれば、少額から手軽に投資できる。投資信託にはアクティブ型投資信託とインデックス型投資信託があるが、主要な市場インデックス型投資信託はニュース等で報道される有名な株式市場の動きと連動しており、値動きが把握しやすい。

 

また、インデックス型投資信託は、一般的にアクティブ型投資信託よりコストが安く、数多くの銘柄を組み込んでおり、少数の株式に投資するよりもリスクが分散されており、リスクが小さい。以上のことから、株式インデックス投資は、資産形成の手段として初心者に適していると思う。

 

ただ、日本では1,000種以上のインデックス投信商品があり、どれを選んだらいいのか戸惑ってしまう方もいるだろう。そこで、主要な株式インデックスについて紹介し、過去のデータに基づいて、どの株式インデックスを選択すべきだったかについて説明してみたい。

※ 投資信託協会ウェブサイトより、公募株式投信のインデックスファンド数が1,079(2021年8月末時点)。

代表的な株式インデックスの紹介

ニュースなどを通じて情報を簡単に入手でき、値動きが把握しやすいという観点から、本稿では図表1に挙げた株式インデックスを分析の対象とする。

 

[図表1]代表的な株式インデックス
[図表1]代表的な株式インデックス

 

代表的な日本株式インデックスにはTOPIXと日経平均株価がある。TOPIXは時価総額が東京証券取引所上場企業全体の96.3%を占めており、株式市場全体の動向を示す指標である。日経平均株価は高い指標性を持っており、一般に広く知られている。

※ 日本取引所グループウェブサイトより、東京証券取引所上場企業全体の時価総額は東証一部、東証二部、マザーズとジャスダックの時価総額(浮動株ベース、円単位)で計算した(2021年9月末時点)。

 

代表的な米国株式インデックスにはS&P500、ダウ平均株価とナスダック100がある。S&P500の時価総額は米国株式市場全体の約80%を占めており、米国の株式市場動向を広く反映している。

 

ダウ平均株価は米国を代表する企業の株価動向を示しており、ニュース等でよく報道される。ナスダック100はITやバイオテクノロジーなど最新技術を持つ企業と米国に上場している海外企業が含まれている。

 

世界の各国・地域を代表するインデックスもある。日本の投資信託によく採用されているMSCIコクサイは米国、イギリス等の先進国株式が組み入れられているが日本株式は除かれている。

 

一方で、MSCI WorldはMSCIコクサイと異なり、日本株式が組み入れられている。MSCI EM(新興国株式)は中国、韓国、インド、ブラジルなどの新興国株式が組み入れられている。先進国と新興国の両方の株式を組み入れているのがMSCI ACWI(全世界株式)である。