成果までの過程と明確な志望理由の「言語化」が必要
ポイント4:結果よりも過程を大事に
選考においては、企業が見ているポイントを押さえた職務経歴書をつくり、的確に伝えることが重要です。企業が見ているのは、「現職であげた成果」だけでなく「その成果をあげるためのプロセス」です。
なぜその成果を出そうと思ったのか、成果をあげるためにどのような戦略を描き、どう行動して成果に至ったのか、やらされ仕事ではなく自分から動いた仕事だったのか…など。そのプロセスと成果から抽出できるその人のスキル・素養は、希望する職種でも発揮できるものなのか、入社後再現できるものなのか、というところを企業は見ています。
例えば、現職が営業で「売上を前年比140%伸ばした」と職務経歴書に書いた場合、採用担当者が本当に知りたいのは、「前年比140%の売上UP」という結果そのものではなく、「どのような工夫をしてその数字をあげたのか」「入社後も同じことができるか」です。この「どのようにして」というプロセスを説明できないと、「経歴はすごいけど本当かな?」と疑問を持たれたり、「営業としてすごい人なんだな」という印象で終わってしまったりする可能性があります。
転職市場の市況感が良い時期に「ポテンシャルがあるから採用する」と判断される場合も、「ポテンシャルがある」の根拠となっているのは、定量的にわかる成果と、そのプロセスから見える入社後再現できるスキル・素養などです。企業の採用基準が上がっている今は、この点がより厳しい目で見られているという認識で職務経歴書に表現していきましょう。
ポイント5:その職種を選んだ理由を明確にする
未経験からの転職をめざす方たちの転職相談を受けていると、「事業企画をやりたい」「マーケティングをやりたい」「人事をやりたい」といった方が多くいらっしゃいます。ただ、その職種である理由を明確に持っていらっしゃる方は多くありません。
例えば、「社会人として成長していく上でその職種に携わることが大事だと思ったから」といった答えが返ってくることがありますが、「現職のままでも成長できるのでは?」「今の仕事をやりたくないだけでは?」という疑念が出てきます。
市況感が良いときはもちろん、悪いときはなおさら、自分の経験に基づいためざす職種への強い思いがなければキャリアチェンジは困難です。納得感のある答えを自分なりに持っておくことが重要です。
もちろん、突き詰めて考えた結果、例えば営業職で「今の会社の営業スタイルが自分の志向と合わないから、よりクライアントと二人三脚で課題解決に取り組む営業に携われる企業に『転籍』したい」という結論になったなら、それがその人にとってのベストな選択です。
転職エージェントが持つ情報も積極的に活用を
当面の間、この買い手市場は続く見込みです。その中でいかにしてキャリチェンジを成功させるか、紹介した5つのポイントを意識して戦略を立てましょう。その過程で、ぜひ転職エージェントからも情報収集をしていただきたいと思います。
インターネットや友人などから得られる情報は質や鮮度がまちまちで、企業の「今」の状況や、求める人材・スキルのトレンドなどはなかなかわかりづらいものです。一方、転職エージェントは採用意欲のある企業の最新の情報を持っているので、自力で集める以上の情報を得られる可能性が極めて高いでしょう。
例えば、実際にあった例を1つ紹介します。ある転職希望者の方が、口コミサイトであるベンチャー企業の良くない書き込みをたくさん見て、その企業に対してネガティブな印象を持っていらっしゃいました。内容は、社員が皆がむしゃらに働き過ぎていることへの不満。
しかし、それは3〜4年前のスタートアップ時の情報で、現在はPCの使用時間に制限があり、それ以上の時間使用する場合は社長許可が必要など、働き方の改善する取り組みが徹底されていることを伝えると、「受けたいです」と考えが変わりました。
このように、転職エージェントは企業の実態について最新のリアルな情報を持っています。お金がかかることではないので、ぜひどんどん聞きに行って、得られた情報をもとに合う・合わないを検討していただきたいと思います。
東海林 浩樹
株式会社キャリア・エックス
CEO/コンサルタント