(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの流行前は、日本国内でも毎年1000万人~2000万人の感染者をだしていたインフルエンザ。これまでの人生、1度は感染した経験があるかと思います。ただ、誰もが知っている症状だからこそ、誤った知識・認識を持った人が少なくありません。そこで今回、小児科医の米田真紀子氏が、インフルエンザに関する「正しい情報」を解説します。

「棒を鼻に突っ込む」あの検査…実はなくても大丈夫?

インフルエンザの診断は、周囲の感染状況と症状に加えて、場合によってはインフルエンザ抗原迅速検査(※)を参考にします。

 

※一般的に広く行われているのは、鼻から綿棒のようなものを入れ、鼻の奥にある鼻咽頭をこすり検体を採取する方法

 

状況から迅速検査をしなくてもインフルエンザと診断できることも多々ありますし、そもそも迅速検査は6割程度の感度しかないとも言われているので、検査はあくまで参考程度と考えています(感度には発症からの時間や検体の採り方など、様々な要因が関与します)。

 

しかし、最近は「学校から検査を依頼されました」といって受診する人も多く、診断方法や検査のタイミングは医師の裁量に任せてもらえるわけではないのが実情で、無用な検査をしなくてはいけなくなることもあります。

 

このことを踏まえ、インフルエンザ流行シーズンに子どもが熱をだしてしまったときも、過度におびえる必要はなく、子どもが何か飲んだり食べたりできているようであれば、まずは半日から1日程度、自宅で様子を見てみることをおすすめします。

 

発熱後すぐに受診しても、ほかの症状や所見がはっきりせず、検査の感度も下がるために、解熱薬のみ処方され様子観察、または後日再診指示となる場合が多いです。これでは、しんどい子供にとってもお母さんたちにとっても余計な負担になってしまいます。

薬に頼りすぎるのは危険

インフルエンザと診断されれば、「その治療は?」という話になりますが、基本的にはインフルエンザであってもほとんどの人にとってはただの風邪の一種なので、特別な治療は必要ありません。

 

特に体力のある子ども、基礎疾患のない子どもの場合は、熱などのしんどい症状を適切にやわらげてあげながら、食べられるものを食べてしっかり水分を摂り、なるべくよい睡眠を取らせてあげられれば、多くの場合2~3日で回復します。

 

オセルタミビル(タミフル)やラニナミビル(イナビル)、バロキサビル(イナビル)などといった抗インフルエンザウイルス薬もたくさん開発されていますが、どれもお薬である以上、一定確率で副反応が出ることがありますし、もし効いたとしても熱が出ている期間を24時間程度短くする程度の効果しかありません。

 

そのことを1人ひとり丁寧に外来で説明できればいいのですが、インフルエンザシーズンは外来がごった返しになり、医師も説明の余裕もなく、希望されるままお薬をだしてしまうことがあります。

 

もしも患者さん側がこのことを知っておいていただけたら「不要なお薬を出さずに済むのにな……」と思うことが多々あります。

次ページコロナ対策はインフルエンザにも効果的