これから必要とされる「起爆剤のような」人材
そこで、次に、今、そしてこれからの時代に求められる人材について紹介したいと思います。企業が重視する人材について、2011年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査結果があります[図表2]。
これによると、これまで育成・確保することを重視してきた人材としてもっとも多かったのは、「職場でチームワークを尊重することのできる人材」(76.2%)でしたが、今後育成・確保するにあたり重視する人材は「指示されたことだけでなく、自ら考え行動することのできる人材」がトップの78.0%で、「職場でチームワークを尊重することのできる人材」は58.3%と数字を落としていました(いずれも複数回答)。
10年近く前の調査でこの結果ですから、今や、「企業に成長させてもらう」「企業と一緒に成長していく」などの依存した考えは通用せず、自らアグレッシブに動き、既存のもの超える新しい発想をしたり、チームを引っ張ったりできる起爆剤のような人が求められていることは明らかかと思います。
「起爆剤のような人」とはどんな人か、もう少し噛み砕いて考えてみましょう。キーワードは、「知識から知恵へ」です。
今は、わからないことはインターネットや書籍で調べれば気軽に知識を手に入れることができます。また、AIをはじめとした各種テクノロジーが、「こういう場合はこうすればいい」などと示唆してくれたり、さまざまなことを自動化できる仕組みもできています。
となったときに大事になってくるのが、「得た知恵をどのように生かすのか」ということです。頭の中の知識をアウトプットして形にする経験を経ることで、知識は実践・実行できる「知恵」に変わる。その知恵を持っている人こそが、今、そしてこれから必要とされる市場価値の高い人材だと考えます。
転職時に評価されやすいベンチャー企業
知恵を持った人材になるには、知識を知恵に変える体験が必要です。その体験ができるかどうかという観点で大手企業とベンチャー企業を比較すると、ベンチャー企業のほうが、知識を知恵に変える経験を若いうちからできるチャンスが多いといえます。
なぜなら、先述したように、ベンチャー企業は、大手企業に比べると、若いうちから裁量や決裁権、スピード感を持ってさまざまな仕事・プロジェクトに挑戦できるから。自分で考え、発信したり、実行に移したりといった経験を積む機会が、大手企業に比べると豊富というわけです。
また、キャリアを中長期的に考えた際にも、実績を目に見える形に残しやすいのは、ベンチャー企業です。
大手企業でプロジェクトマネジメント的な動き方をしていると、どうしても携わった仕事の実績の見える化、すなわち、その仕事にどこまで自分が介在できたのか、また、成果に対して自分がどう貢献したのかの説明が難しく、応募先企業も評価しづらいため、爆発的な評価は受けづらくなります。
他方で、ベンチャー企業では、規模や予算の大小はあっても、裁量や責任をもった仕事ができるため、より高いスキルを得られ、転職においても評価されやすくなります。
もちろん、大手企業の方が向いている方もたくさんいます。ただ、昨今の日本の経済状況や企業で求められていることを鑑みると、知恵を持った人材になるための選択の一つとしてベンチャー企業というのは、大いにおすすめできる選択肢です。
東海林 浩樹
株式会社キャリア・エックス
CEO/コンサルタント