物価が安く、気候が温暖な東南アジアでのセカンドライフを目指す高齢者は多い。若い現地人妻・温かい家族と豪邸で暮らす人も少なくはないが、言語や環境に適応できず、女性にも捨てられて無一文で暮らす人がいるのも事実である。それでも日本で老後を送るよりは…と海外移住を決意した人々には、それぞれ語られるべきドラマがあった。ここでは、フィリピンで長く取材を続けたノンフィクションライターの水谷竹秀氏が、セブ島で暮らす日本人男性・中澤さんの、前妻とのエピソードを紹介する。 ※本連載は、書籍『脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』(小学館)より一部を抜粋・再編集したものです。
年金12万円、セブ島へ移住…フィリピン人女性と“嘘のような結婚生活” セブ島のビーチ(撮影:水谷竹秀)

「元妻を相手に裁判した男性」も…つぎ込んだ衝撃額

私がこれまでの取材で出会った日本人男性で、妻のフィリピン人女性につぎ込んだ最高額は、宅地も含めて1億4000万円。本人の話だけでなく、実際に本人から見せてもらった送金証明書を計算してはじき出した数字だ。この男性はその後、妻を相手どってフィリピン国内で裁判を起こした。だが、相手の土俵で勝負しても勝ち目は薄い。

 

それに、そこまでの額に達すると、大金をつぎ込んだ日本人男性にも問題があると言わざるを得ない。よくフィリピン人女性に金を騙し取られた、という話を聞くと、フィリピン人女性が一方的に悪人のように思われがちだが、騙される「隙」を作った日本人の方にも原因はある。

 

さらに言えば、こういう日本人男性がいるから、「日本人=お金」という固定観念をフィリピン人に刷り込んでしまうのだ。ゆえに新たなターゲットが現れては騙されるという失敗談が際限なく繰り返されるのである。

 

 

水谷 竹秀

ノンフィクションライター