新卒時に職に就けなかった人、不本意ながら非正規雇用に就いた人が多い就職氷河期世代。「アベノミクス下における氷河期世代の雇用環境の変化」、「女性の就業増」について、日本総合研究所・主任研究員の下田裕介氏が解説していく。 ※本記事は、書籍『就職氷河期世代の行く先』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
「将来が不安で…」夫婦やひとり親で家計を支える“就職氷河期世代” (※写真はイメージです/PIXTA)

【関連記事】「勝ち組になれない」氷河期世代…正社員の間でみられる“世代間格差”

失業率は「大幅に改善」

就職氷河期世代、さらにはその下の世代は、若年時から厳しい状況に身を置き続けてきたわけであるが、就職氷河期世代が30代〜40代前半にさしかかった2012年末に安倍政権が誕生した際に、わが国では長引く景気低迷とデフレからの脱却に期待が高まり、同世代を取り巻く環境も改善するのでは、との声もあった。

 

コロナ・ショック前までの経済状況をみると、アベノミクス始動後、実際に明るさを取り戻した面もある。顕著に表れたのが失業率の改善だ。

 

総務省「労働力調査」より完全失業率をみると、就職氷河期世代のほか下の世代も含め、20代後半には男女ともに6〜7%程度と、上の世代と比べて高かったものの、新型コロナ問題が顕在化する直前は団塊ジュニア世代が2%台まで低下するなど、大幅に改善した([図表])。

 

[図表]完全失業率

 

次に、総務省「労働力調査」から、就職氷河期世代の年長者である団塊ジュニア世代を中心とする5歳ごとの年齢階級で、年を追っての就業状態や従業上の地位の変化をみてみよう。

 

まず、男性においては2005年における30代前半から2015年における40代前半の10年(団塊ジュニア世代は31〜34歳から41〜44歳であり、30歳、40歳は含まれない点に留意)で、完全失業者は20万人から13万人と約7万人減少している。

 

また、就業者は、正規雇用者が減ったとはいえ、全体の7割以上の約360万人を占めているほか、非正規雇用者は39万人から35万人と約4万人減少、役員は13万人増え、14万人から27万人となっている。ちなみに、コロナ・ショック前の2019年でも、おおむね同様の傾向が確認できる。

 

一方、女性は男性と比べてこの間、大きな変化が生じている。家事に従事していた非労働力人口は、172万人から112万人と、実に▲60万人の大幅減少となっている。

 

それに代わって増えたのは雇用者である。非正規雇用者が114万人から184万人と70万人増えた。2019年も2005年から2015年までの10年間の変化のペースほどではないものの、家事に従事する非労働力人口の減少と、非正規雇用者の増加の動きが同様に続いている。

 

このように、就職氷河期世代は、就職氷河期やその後の厳しい経済環境に身を置いたものの、新型コロナ問題が生じるまでは雇用や所得の安定度が以前より高まった人も増えたことは確かである。