中身を見ても、絶対に正しい評価など存在しません。実際に、仕組みを用いて評価を下すのは、制度のいかんにかかわらず、人事権のある上司です。
しかも、最終的に評価を決定するのは、上司と部下の間に存在する「相性」になります。更に、相性が「いい、悪い」は職責が「上がれば上がるほど」評価に大きな影響を与えます。
なぜなら、己の身を守る「動物的本能」が、「上に行けば行くほど」本領を発揮するようになるからです。こればかりは、どうにも止めようがありません。
会社は、収入を得たり、キャリアを構築するところであると同時に、生き残りをかけた「戦いの場」です。仕事ができるとかできないとか、職場が楽しいとかつまらないとか、業務がラクとかキツイという次元を超えて存在します。
まさに、「サバイバルゲーム」の場であると言えます。
上司の言葉「便利屋になってはいけない」の真意
長い会社人生、必ずどこかで、相性の悪い上司とも巡り合います。仮に相性は良くても、相手が損得勘定に長けた上司だと、使い勝手の良い「便利屋」として使われてしまいます。
かなり前になりますが、相性の良かった上司から、「くれぐれも、便利屋にだけはなってはいけないよ」と、アドバイスをもらったことがあります。
言い換えると、「器用貧乏にはなるな」とも受け取れます。当時、多少なりとも幅広い業務を、無難にこなしていたので、きっと、先々のことを心配してくれたのでしょう。その上司はすでに他界していますが、この言葉は今も忘れることなく、心の奥底に刻んであります。
とはいえ、部下が上司を選ぶわけにもいきません。上司の評価次第で、思わぬ苦境に立たされることもあります。
「サラリーマンの悲劇は、部下は上司を選べない」は、なかなか的を射た格言であると言えます。付け加えると、「中間管理職の悲劇は、上司も部下も選べない」でもあります。この「悲劇」にはまると、もうどうにもなりません。
相性の悪い上司と、言うことを聞かない部下が同居するのですから、悲劇を通り越して、ほとんど「喜劇」の世界です。笑ってやり過ごすしかありません。
会社組織の中で生きていくためには、たとえ上司との相性が悪くても、気が合わなくても、明らかに「嫌われている」と感じる時も、上司と上手に付き合っていくことになります。
上手に付き合いながら、組織の中をしたたかに、泳いでいかなくてはなりません。大変なことではありますが、頭の中を切り替えて、所詮は「好き嫌い」と割り切る必要があります。
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中山てつや
1956年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。日系製造メーカー及び外資系IT企業を経て、主にグローバル人材を対象としたキャリアコンサルティングの仕事に携わる。