(※写真はイメージです/PIXTA)

手がしびれる病気のなかで、早期発見で悪化を防げる可能性がある病気のひとつに、「手根管症候群」というものがあります。原整形外科病院の原えり先生が「手根管症候群」の症状や治療法について解説します。

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手のしびれは様子見でいいの?

手がしびれる病気は、無数にあります。整形外科の範囲だけでも、頚椎の変形や椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群、肘部管症候群、ギヨン管症候群、手根管症候群などの末梢神経が物理的に押し潰されて起こる病気や、肩こりや五十肩などの神経は悪くなっていないのに手のしびれを自覚する病気など、さまざまなものが挙げられます。

 

全身に目を向けると、脳梗塞や脳出血、血管の病気、膠原病、糖尿病による神経障害、神経内科で扱う病気、更年期障害など、手にしびれを感じる病気はいくらでもあるのです。

 

命にかかわる重大な病気のサインをなるべく早く見つけるべきなのはもちろんですが、早めに見つければ体に負担の少ない治療で済む病気もあるため、どんな病気でも早期発見・早期治療が大切になります。

 

手がしびれる病気のなかで、早期発見が悪化の防止につながる病気に「手根管症候群」というものがあります。「手根管」は、手首にある、正中神経と指を曲げる腱の通り道です。硬い横手根靱帯と手根骨でできているので、拡がることができません。

 

「手根管症候群」は「手根管」がなんらかの理由で狭くなってしまい、正中神経が押しつぶされてしまうことで、指と手のひらのしびれや痛みを感じたり、親指が筋力の低下によって動かしにくくなったりする病気です。

しびれの部位で診断ができる

整形外科には、手足のしびれに困って受診なさる方が数多くいらっしゃいますが、そのなかでも手の親指、人差し指、中指の先だけにしびれや痛みがある方の場合には、手根管症候群を疑います。

 

末梢神経は、上流である脊髄から出て、さまざまな部位に向かって枝分かれしている神経のことです。途中で通り道が狭くて押しつぶされると、その場所より先で枝分かれする神経が司るすべての部位で、しびれや痛みが起きたり、動かしにくくなったりします。

 

手首から手のひらにかけて、末梢神経である正中神経と指の腱が通るトンネルが、手根管です。正中神経が手根管を通っている部分は末梢神経のなかでは枝分かれの下流に近く、しびれと痛みの範囲は、手根管でしめつけられた正中神経が感覚を司っている範囲にはっきりと限定されます。

 

具体的には、手の親指、人差し指、中指、薬指の親指側半分の先と手のひら側、ちょうどその指の根元に当たる部分の手のひら、親指の付け根のふくらみの部分です。

 

そして、手根管のところで枝分かれしている細い神経が、親指を立てる筋肉(短母指外転筋)を司っています。この筋肉に神経の刺激が行かなくなると、親指を手のひらに垂直に立てたり、人差し指と親指できれいな丸を作ったりすることができなくなります。このため、縫い物などの親指を使った細かい作業をすることが難しくなるのです。

 

手根管症候群の方は、手首を強く曲げて両手の甲を1分間合わせていると、しびれが強くなります。この方法は、ファーレンテストといって、この病気に特有の診断方法です。また、手根管の上の皮膚を叩くと、指先に響くような痛みが起こります(ティネルサイン)。

 

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※本記事は、最先端の「自分磨き」を提供するウェルネスメディア『KARADAs』から転載したものです。