「孤独死」についての認識が、変化している
団地の住民たちの孤独死への認識や、その口述方法も変わっている。2008年に筆者が調査を始めた時、住民は孤独死の現場の異臭を思い出して強い嫌悪感を表した。2017年の調査でも、孤独死は「事件」として語られたが、「臭い」に関する言及はなかった。
これは孤独死対策が展開されることで、一人で死を迎えたとしても早いうちに発見されることと関連しているよう考えられる。誰にも看取られずに死亡することと、その後も放置されることとは、大きく異なる死の様相である。
早いうちに発見されることで、孤独死は大騒ぎになる異常死ではなく、隣人におとずれた寂しい「孤独な死」となるのだ。
「最後は自分で始末できないものだ」という住民の発言は、孤独死という共通の課題の前で高度経済成長時代における「自立の神話」「自己完結の幻想」を考えるきっかけとなる。
その時、「孤独死」という死の経験はアトム化の終着点であると同時に、その「死」を鏡にして「生」を振り返る転換点となるだろう。
参考文献
일본 사회복지협의회를 통해 본 “새로운 공공”:도쿄 북구사협의 지역복지 사례를 중심으로(日本社会福祉協議会からみる地域福祉の「新しい公共」) 2018 『민주주의와 인권』 18(1):153-181
高橋絵里香 2013 『老いを歩む人びと――高齢者の日常からみた福祉国家フィンランドの民族誌』 勁草書房
Varenne, Herve 1977 Americans Together. Structured diversity in a midwestern town. Teachers College Press.
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藤田真理子 2013 『アメリカ人の老後と生きがい形成――高齢者の文化人類学的研究』 大学教育出版
岩本通弥 2013 『解説/解題グリンデル高層住宅――団地暮らしの映像民族詩的接近』、マイケ・ミュラー『Die Grindelhochhäuser Eine filmerhnographische Annäherung an das Wohnen im Hochhaus(グリンデル高層住宅――団地暮らしの映像民族詩的接近)』 ハンブルク大学民俗学研究所マギスター卒業作品日本語版DVD、東京大学院総合文化研究科
朴承賢
啓明大学 国際地域学部 日本学専攻 助教授