統計を見ると、2020年の非正規雇用は10年前の2.5倍となっています。雇用問題から派生する中高年のひきこもりという問題は、もはや他人事ではありません。ここでは臨床心理士の桝田智彦氏が、あらゆる視点から「中高年のひきこもりの実像」に迫っていきます。 ※本連載は、書籍『中高年がひきこもる理由』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
パワハラや介護で退職…社会から外された「中高年ひきこもり」の悲惨 ※画像はイメージです/PIXTA

「一人前の社会人」が「ひきこもり」になる実態

もちろん、新しいタイプのひきこもりの方がいるいっぽうで、従来の若年層と同様のタイプのひきこもりの人たちも見られます。

 

中高年のひきこもりは従来のタイプと新しいタイプとの2種類に分けて考えない限り、その実態を的確に把握することも、理解することもできないという思いを強くします。

 

そこで、私の考える「従来のタイプのひきこもり」「新しいタイプのひきこもり」について、簡単に説明しましょう。

 

従来のタイプ:思春期から20代前半における挫折によってひきこもり、そのまま中高年までひきこもっているタイプ。もしくはぶり返し(ひきこもりから抜け出したあとで、再びひきこもってしまうこと)が続いた結果、ひきこもりが固定化したケース。

 

本人の繊細な資質や性格的な傾向、不適切な養育経験、いじめや人間関係トラブルなどによるところが比較的大きいひきこもりを指します。これまで論じられてきたひきこもりの多くは、こちらに相当すると言えるでしょう。

 

新しいタイプ:雇用状況などの社会的要因や、職場などでのパワハラ・セクハラ、親の介護を含めた環境要因によって、ひきこもらざるを得なくなったタイプ。個人の資質以上に社会や国の経済政策の失敗等が抱える諸問題が影響しているのが特徴で、これまであまり扱われることのなかったという意味では、新しいタイプのひきこもりと言えます。

 

もちろん、ひきこもりになる原因やきっかけは人それぞれですし、性格的な要素や社会的な背景などが複雑に絡み合っていますので、完全に分けられるものではないことは承知しています。

 

しかし、話をわかりやすくするためにも、ここでは、中高年のひきこもりを以上の2つに大別して話を進めていきます。そして、この2つのタイプのうち、中高年のひきこもりでとくに注目したいのは、②の新しいタイプでしょう。

 

このタイプに属する人のほとんどが、ひきこもる以前は、正社員として働いてきた「一人前の社会人」でした。しかし、なんらかの理由でひきこもってしまったのです。新しいタイプのひきこもりの方々は、ひきこもりを「自分の事」として考えるべき問題として、私たちに突きつけてくれていると感じます。