つまり、「不安定さ」がひきこもりに繋がるワケは…
アイデンティティは「自分が自分でいい、そして社会からもそんな自分(あなた)でいいと思われているであろう確信」でした。これはまた、人が青年期以降を生きていくうえでの「土台」のようなものだと、私は思います。
アイデンティティという名の土台が堅固であれば、社会に出たときも、多少の困難に遭遇しても揺らぐことなく、安定して立っていられます。しかし、それが脆弱だと、衝撃を受けたとき、たとえそれが小さなものであっても、土台が揺らぎだし、その上に立っている人間もグラグラと揺れてしまうでしょう。
このような不安定な状態のまま外へ出ていくのは大きな不安と恐怖を伴うので、家に閉じこもってしまう……。ひきこもりがアイデンティティを獲得できていない状態(これを「アイデンティティの拡散状態」と言います)にあるというのは、そういう意味なのです。
桝田 智彦
臨床心理士