先月末、国税庁が発表した『民間給与実態統計調査』の最新結果。2年連続で会社員の平均給与は減少し波紋を広げていますが、さらに細かくみていくと、「給与格差」やさらに厳しくなるだろう会社員の未来が見えてきました。
30年間、給与が上がらない日本…「正社員でも負け組」という絶望感 (※写真はイメージです/PIXTA)

社員の未来は約束できません…経団連が宣言

小泉政権の構造改革で非正規雇用者が大幅に増加し、正規と非正規の格差が拡大といわれています。会社員の平均給与のマイナスは非正規の増加によるもので、正規であれば安泰、コロナ禍が収束すればひと安心……という見方もできますが、ただ状況はそう甘くないようです。

 

2年前の2019年、当時経団連の中西宏明会長による「終身雇用の見直し」発言。いまだ物議を醸していますが、ようは日本の企業には終身雇用を維持できるほどの体力はない、社員の未来に責任を負うことはできない、ということを宣言した、といえるでしょう。先日、サントリーホールディングスの社長の新浪剛史氏が唱えた「45歳定年制」が波紋を広げていますが、こちらも企業側の現状を示すものといえるでしょう。

 

また経団連は副業・兼業の促進を全面に押し出しています。表向き「働き手のエンゲージメントを高める」「働きがいと働きやすさを高める」などとうたっていますが、終身雇用の限界を訴えた後であることを顧みると、「会社は社員の給与を約束できないから、外で稼いで」と日本の大企業が宣言している、と捉えることができます。会社員として収入を得るだけでは、暮らしていけない……そんな時代が迫っているのです。

 

このような状況に経営陣を批判する声も聞かれますが、だからといって状況が改善するとは思えません。「正社員だから安心」という時代が終わったいま、自身のことは自身で守るしかないようです。