女騎士「くっ……殺せ!」
オーク「がはは! そうはいくか!」
女騎士「くそっ! 魔剣デュランダルさえあれば、お前など斬り伏せてやるのに……」
オーク「デュランダルとはこいつのことか?」
女騎士「な、なぜお前が私の愛刀を!? 返せ! それはわが一家に代々伝わる大切な品だ!」
オーク「そんな大事なものを枕にして野宿していたのはどこのどいつだ」
女騎士「それは、その……ちょっと油断したのだ……」
オーク「魔剣の力を借りなければ、ただの小娘だな。俺たちオークに簡単に捕まってしまうとは」
女騎士「私を女だと思って侮らないでもらおうか。騎士たる者、日々の鍛錬は欠かしていない。魔剣がなくても片手でりんごを握り潰せるのだぞ!」
オーク「ガハハハ! 今の状況でそんな宴会芸が何の役に立つ?」
女騎士「人の特技を宴会芸呼ばわりとは……。くぅぅ、こんな屈辱は初めてだ……」
オーク「さてと。この剣を取り返したければ、貴様にはやってもらいたいことがある」
女騎士「魔剣をダシに私を脅迫するつもりか? なんと卑劣な……」
オーク「くくく……最初は戸惑うかもしれないが、心配ない。すぐに慣れる」
女騎士「わ、私に何をさせるつもりだ! 生きて辱めを受けるくらいなら、死んだほうがマシだ。殺すならひと思いに殺せ!」
オーク「辱め? お前は何を言っているんだ?」
女騎士「は?」
オーク「お前にはちょっとしたデスクワークをやってもらいたい」
女騎士「デスクワーク」
オーク「ああ。じつは俺たちオークの一族は近いうちに法人成りを計画している」
女騎士「法人成り」
オーク「貴様には経理のお姉さんとして、俺たちの繁栄に役立ってもらうぞ」
女騎士「経理のお姉さん」
▼こうして女騎士の経理担当者としての日々が始まった。
オーク「なに? 帳簿の数字が90ギール合わないだと?」
女騎士「くっ……殺せ!」
オーク「がはは! この程度の経理テクニックも知らんとは! ズレが9の倍数のときは、どこかで数字をあべこべに入力している可能性が高いのだ」
オーク「ほら、ここ。1千234Gが正しいのに1千324Gと入力されている」
オーク「なに? またもや帳簿の金額が合わないだと?」
女騎士「くっ……殺せ!」
オーク「バカめ、まずはズレた金額を0.08で割れ。出てきた数字にズレた金額を足して、似たような金額の取引を探すのだ」
オーク「ほら、ここ。税抜で入力せねばならんのに、消費税込みの金額が入力されている」※消費税率8%の場合
女騎士「見ろ! ついに簿記に合格したぞ!」
オーク「そうか、ではさっそく我々の製造している棍棒の原価計算をしてもらおう」
女騎士「くっ……殺せ!」
オーク「どうした?」
女騎士「まだ3級なのだ……」
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