「食卓に座って流しまで手が届く」ぐらい狭くなった部屋
2019年時点で、桐ヶ丘団地では、一人世帯向けの1DK、夫婦世帯向けの2DK、3人以上の家族向けの3DKが、4対4対2の比率で建てられていた。単身者は和室6畳、食事室4.5畳の1DK(32平方メートル)へ、2人世帯は和室6畳、洋室4.5畳、食事室6畳の2DK(47平方メートル)へ、3人以上の世帯は和室6畳、洋室4.5畳、洋室4畳、食事室6畳の3DK(57平方メートル)へ入居することになっているのだ。
1DKの登場は建替え過程で最も目立つ間取りの変化である。建替え第1期の住民たちは一人でも1DKか2DKのどちらかを選択することができたという。
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27号棟(18階建て)と3号棟(19階建て)が一番最初。第1期は緩やかだった。私は第1期に(現在の桐ヶ丘デイホームの付近に)引っかかった。初めだったから、建てるうちに皆が浮間※の新しくなったところに移ったり、桐ヶ丘団地の空き部屋に入った。浮間から戻りたい人は帰ってきた。戻りたくない人は浮間に残った。抽選会で、一人でも2DKに入る人もいた。第1期は選択肢があったの。第2期から急に厳しくなった。27号棟の空いている部屋に第2期の人も入ったが、そのうち一人は1DKに決まった。(2012年4月、建替え第1期の27号棟に住んでいる住民へのインタビュー)
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※ 浮間(JR北赤羽駅付近)にも都営団地が存在する。
しかも、第1期の1DKは「それほど狭くなかった」ともいわれる。
第2期以降、部屋はますます「コンパクト」になった。住民たちは、「食卓に座って流しまで手が届く」ぐらい狭くなったと表現した。
2010年の建替え説明会の頃に行ったインタビューで、東京都都市整備局の計画担当者は、都心部の住宅がだんだん狭くなるため、公営住宅法の標準設計による都営住宅も狭くなるのが公平であると語った。
既存公営団地の2DKが若い夫婦と子供による「標準家族」のために建てられた空間であったなら、1DKは家族時代が終わってから残された「個人」を容れる住まいなのだ。