40~50代の相続人たちに見える「意識の変化」
しかし、相続人世代となる40~50代になると、その意識も少しずつ変化が見られるという。
曽根「昔は長男長女といった『跡取り』が財産の大部分を相続していましたが、いまの時代はみんな平等です。そうなると、資産も分けやすい形に変えておかなければなりません。そのため、この世代は『そのままで受け継ぐ』という思考を持たない方も多いのです」
夢相続には、上記のような考えを持つ子どもに伴われて相談に訪れる地主も多いという。
曽根「どのように資産を遺し、分割するのかは、最終的には被相続人である親世代が決めることです。しかし、家族全員が納得していなければ、やはり後々トラブルの種になります。資産を守るという観点からも、家族全員で考えることが大切です」
近年登場した「ニュー資産家層」の思考と価値観とは?
一方、曽根氏のところには中小企業オーナーや投資家など、金融資産を多く保有している富裕層も訪れる。それらの層は、地主とはまた違ったマインドをもつという。
曽根「若くして起業してM&Aで資産を得た人や、株式投資やFX、最近では仮想通貨などで資産を築いた方は、いわば『ニュー資産家層』と呼べるでしょう。こういった方は頭がよくて合理的で、自分が人生を楽しむために、資産を積極的に使う傾向があります」
地主層が、資産(主に土地)をそのまま承継することに価値を見いだすのに対し、ニュー資産家層は、人生を楽しむことに重きを置いている。そのため、子どもには質の高い教育を受けさせるものの、自分の資産をそのまま受け継がせる必要はないと考える人もいるという。
曽根「人生100年時代、50歳でもまだ半分です。長い老後を豊かに、そして子どもに迷惑をかけずに生きるため、『築いた資産は自分たち夫婦のために使う』という考え方をする方が増えています。元気なうちは旅行などのさまざまなレジャーや趣味を楽しみ、体が弱ってきたら、介護付きの老人ホームなどに入り、子どもには迷惑をかけないというスタンスです。しかし、資産を使い切るタイミングと亡くなるタイミングをそろえるのは無理ですから、やはり、資産活用や相続対策の相談ニーズはあります」
「地主」「ニュー資産家」以外にも、弁護士や会計士といった高度専門職の資産家層からの相談も多いという。彼らはクライアントを親身にサポートする一方、多忙すぎて自身の対策には手が回らないのだ。
独自ノウハウが必要な「富裕層の相続サポート」に勝算
曽根氏が事業をスタートさせた30年近く前には、一般家庭向けの相続対策・生前対策をサポートするビジネスはほぼ皆無だったが、2015年の基礎控除引き下げ以降、金融機関をはじめ、弁護士、税理士、司法書士等もこぞって看板を掲げはじめるなど、現在は明らかなレッドオーシャンだ。そこでのビジネスの差別化について、どう考えるのだろうか。
曽根「クライアントの問題解決には、プランニングの段階において、節税・親族の紛争予防・納税資金確保、収益事業を開始する場合は収益のシミュレーションなど、予想される結果と効果を明示できなければなりませんが、これらはひとつの対策で完璧とはなりません。私たちには、これまで蓄積し、磨いてきた数々のスキームがあり、オーダーメイドでの対策の提案が可能です」
相続対策をうたう窓口は増えているが、実践的なノウハウや、状況を俯瞰した最適な対策を提示できるところばかりではないという。なにより、生前対策から相続発生後の対策、それに伴う各士業と連携した手続きまでをワンストップでサポートできるところは少ないのが現状だ。
曽根「これまで、相続の生前対策をサポートするという発想はなく、それを担う『資格』も存在しませんでした。税額の計算や申告書類作成なら税理士、法的トラブルなら弁護士、登記なら司法書士と、それぞれサポートしてもらえますが、いずれも〈相続になってからの対応〉です。その状況を踏まえ、私たちは『一般社団法人相続実務協会』を設立し、相続に関するさまざまな課題について対策を提案できる専門家を育成する『相続実務士』という資格制度を作りました。相続実務士は、お客様の生前から相続発生後まで、お客様と士業とをつなぎながら、トータルで相続に対するアドバイス、提案、サポートができる専門家です。今後、相続実務士資格を持ったコンサルティング人材を数多く養成し、広めていくことは、私たちの大きな事業テーマなのです」
曽根氏は今後、富裕層の相続サポート体制をより一層強固にしていきたいと考え、行動している。
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