ハーバード大の研究に裏付けられたウッチャンのリーダー像
ハーバード大学の「幸福学」研究で訴求されているが、人間の仕事のモチベーションに、進捗を得られたという感情が大きく寄与する「進捗の法則」というものがある。
進捗を感じられた時の、気分のよさ、満足感は、「最良の日」を実感する喜びや楽しさにつながる。
チーム全体の売り上げ達成などハードルが高い「目標」ほど、より楽しさを得られることは間違いないが、簡単に実現できることではない。
そこだけに意識を集中していては、いくら楽しもうとしても眉間に皺が寄るばかり。もう少し手軽に、こまめに進捗のご褒美を味わえる楽しみを見つけておくやり方だ。
たとえば、ここ最近思うような成果をあげられていなかった「部下の成長」にリーダーであるあなたの目標項目を設定し、彼や彼女の伸長率を“一つの楽しみ”に設定してみる。はたまた、通常であれば2時間を要する業務を1時間50分で終え、生み出した10分で美味しいコーヒーを一杯飲むことを目標にしてもいい。
あなたが設定した小さな楽しみから得られる達成感の積み重ねが、やがて仕事全体を楽しめるマインドへとつながる。
こうして、あなたがリーダーとしての一つ一つの職務を楽しみながら続けていくことが、知らず知らずに、「汗をかく」という姿勢につながっていく。
大事なのは、この思考とアクションの「順序」を理解することであり、誰よりも楽しんでいるからこそ、自らの心に無理なく、誰よりも汗をかける。
さらにリーダーが誰よりも一番楽しむことが、チーム員やプロジェクト全体に及ぼす影響についても考えて欲しい。
全員が楽しんで働けるようになる、リーダーが目指すべき姿
内村が脚本・主演を務めた舞台のプロデューサーの前出・白石千江男氏は、「大変だけれど、それ以上に楽しい」と、内村とまた一緒に舞台を作ることを切望してやまない。
「スタッフにつっこんでくれたり、まるでひとりコントのように自主練する自分を揶揄してみせたり、内村さんが楽しい雰囲気を作ってくれるから、内村さんの舞台は稽古が楽しいんです。
性格的にも怒ったりする方ではありませんが、おそらく、稽古をスムーズにいかせたいなら楽しくやることが大事であると、分かっていらっしゃるんだと思います。楽しいから、スタッフたちもみんな、楽しみながら頑張れてしまう」
部下にしても誰だって、どうせ同じ仕事をするのであれば、楽しんで働きたいのである。
リーダーが先頭で、誰よりも楽しむ姿を見せることは、チーム全体の雰囲気を「楽しいもの」に変える力がある。誰もが困難な状況下で奮闘しなければならない仕事に、不平不満を持たず懸命に立ち向かえるほど、強い人間ばかりではない。それでもリーダーが楽しんで笑っていれば、周囲の人間も含めたチームにその空気は伝播し、みなも楽しんで一緒に汗をかくようになる。
だからこそ、目指すべきリーダー像は、一番汗をかいて「大変そうな人」ではなく、一番汗をかいて「楽しんでいる人」なのである。
畑中 翔太
博報堂ケトルクリエイティブディレクター/プロデューサー