不良債権処理は常に「早め」の対処を
景気が減速傾向にあるときなどは、回収できずに残ってしまう債権が多発するケースがよくあるものです。当然自社の業績も悪化することは間違いなく、できれば不良債権処理は早め、早めに済ませておきたいものです。また、いつまでも債権の回収にこだわらずに、回収できなかった金額の一部でも、損金計上という形で支払う税金を安く抑えることができたと考えて、諦めてしまうことも大切です。つまり、経営者は発想の転換が必要なのです。
日本経済が、バブル崩壊以後、20年にわたって景気が停滞してしまったことも、銀行などの金融機関や一般企業がいつまでも不良債権の処理を怠ってきたからといっても過言ではありません。経営の健全化という意味でも不良債権の放置は避けたいものです。決算の直前になったら、期末に売掛金や貸付金の中に、回収不能になっているモノがないかを確認するようにしましましょう。
不良債権を損金計上する際の条件
ところで、不良債権といっても、税務上すべてのものが損金に計上できるわけではないので注意が必要です。基本的に、不良債権処理が認められるものは、次のようなケースと考えていいでしょう。
●会社更生法や民事再生法などによって、債権が消滅、回収不能に陥ったもの・・・・法的に経営破綻した企業などの債権。法的に「貸し倒れ」と認められており、不良債権として認定される。
●相手先企業の経営状況、支払い能力から判断して債権の全額が回収不能と認められるもの・・・・法的に倒産などはしていないものの、事実上の貸し倒れ状態になっている債権。
●取引停止などが1年以上続き、形式上の貸し倒れと認定されるもの・・・・売掛債権はあるが、何らかの事情で取引停止となり、回収が困難と思われるもの。
こうした不良債権の処理では、相手企業などが法的に倒産して会社更生法の申請や民事再生法の申請をしていれば問題ありませんが、倒産までは至っていないものの、状況から判断して事実上の貸し倒れ状態になっているもの、あるいは経営状況に問題はなくても、お互いに訴訟合戦のような形で敵対関係となってしまい、売掛金回収のメドが立たないといったケースでは注意が必要です。
事実上の貸し倒れのようなケースでは、まず相手側に何度も「請求書」などを送りつけて回収の意思表示を行い、それでも回収できない状況をきちんと記録として残しておくことが大切です。なにも請求しないでいきなり不良債権として損金計上するのは後のトラブルの元になります。
一方、さまざまな事情から債権の回収が困難なケースでは、回収を諦めて損金処理してしまう方法もあります。たとえば「内容証明郵便」などを使って、その債権放棄する趣旨を相手側に伝えるという方法です。債権放棄の手続きをとってしまえば、貸倒金として損金計上することが可能になります。
次回は、社員の仕事効率アップにもつながる社宅の節税効果についてご紹介します。