「働いて働いて年金額を増やす!」…高齢者のやる気に潜む落し穴
厚生労働省『令和元年度 厚生年金・国民年金事業の概況』によると、厚生年金の第2号被保険者は4488万人。そのうち第1号厚生年金被保険者(第2号は国家公務員、第3号は地方公務員、第4号は私立学校教職員)は4037万人(男性2488万人、女性1550万人)です。
また厚生年金保険(第1号)受給者数は3543万人。平均年金額は月14万6162円。障害年金として受給されている人の平均年金額は10万2711円、遺族年金として受給されている人の平均年金額が8万3285円でした。
また受給額ごとにその分布を見ていくと、平均受給額の14万円以上を受け取っているのは約半数。また6人に1人は、20万円以上を手にしています。
【厚生年金「月額受給額の金額別分布」】
5万円未満 2.91%
5万~10万円未満 20.76%
10万~11万円未満 6.93%
11万~12万円未満 6.27%
12万~13万円未満 5.71%
13万~14万円未満 5.51%
14万~15万円未満 5.58%
15万~16万円未満 5.77%
16万~17万円未満 6.08%
17万~18万円未満 6.28%
18万~19万円未満 6.11%
19万~20万円未満 5.67%
20万円以上 16.39%
出所:厚生労働省『令和元年度 厚生年金・国民年金事業の概況』より
2022年4月以降、仮に65歳以上で月収が25万円だったとしましょう。在職定時改定が行われると、単純計算ですが年間で1万6000円ほど増額される計算となります。「たったそれだけ」と感じるかもしれませんが、それが生涯続くわけですから大きなもの。働いた結果が手にする年金額に反映されるわけですから、モチベーションも変わるでしょう。
「在職定時」の改定の狙いは、「就労を継続したことの効果を退職を待たずに早期に年金額に反映することで年金を受給しながら働く在職受給権者の経済基盤の充実が図られます。」(厚生労働省のホームページより)とある通り。
しかし高所得者は「年金カット」が発生する場合もあるので注意が必要です。現行制度では、「老齢厚生年金の年金月額(加給年金を除く)」と「総報酬月額相当額」の合計額が47万円を超える場合は、47万円を超えた額の1/2の年金額が支給停止になります。現行制度では年金カットの対象にならない人でも、「在職定時改定」により年金額が増えた結果、年金カットの対象になる可能性があるのです。年金カットされた分はその後支給されるのか、といえば答えはNO。2度と受け取ることはできません。
「年金をカットされても、給与で取り返す」というほどの高給取りであればいいかもしれませんが、対象ギリギリの人は、給与額を調整して勤務したほうが損はありません。