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お客さんに来て欲しいような、来て欲しくないような…ルワンダに店をオープン
アジアンキッチンは、ルワンダの首都キガリにオープンした。といっても、日本のように「祝・開店」と書かれた札の刺さった花が贈られるようなこともなく、ひっそりとしたものだった。
接客トレーニングはいくら重ねてもコントさながらだし、料理も少し目を離すと、とんでもないものができ上がってしまう。あと何週間訓練すればこのレベルまでいける、という確信が全く持てない。予想不可能なことに時間を割くよりは、未熟なままでもひとまず市場に晒しながら、磨いていく方がいいだろう。というか、そうするしかない。このまま永遠に身内でコントを繰り広げていても、どうしようもないのだ。
ただし、まだまだ未熟なこの状態で、お客さんが高い期待値で来た場合、ガッカリして二度と戻って来ないかもしれない。ただでさえ小さな市場で、そんなことになれば開店して間も無く閉店してしまう。だから宣伝するのはまだ待とう。というわけで、実際は、お客さんに来て欲しいような、来て欲しくないような、微妙な心境だった。こんな飲食店オーナー、他にいないだろう。極力気づかれずにオープンしようだなんて、我ながら意味不明だ。
でも開けると決めた以上、ビクビクしてはいられない。おそらく確実に問題は起こるだろう。その時は、その場で私がトラブルシューティングをするしかない。オープンからクローズまで店に張り付いてやりますぜ! 見切り発車でもなんでも、発車しないと始まらないのだ。自転車に乗れるようになったら乗ろう、では、いつまで経っても乗れないままだ。こんな風に、自信はないけれど、覚悟だけはあった。
会社員時代はとにかく間違えることが怖かった。でもここはルワンダだ。文化も違えば商慣習も違う。何もかもが違う、という前提条件が、私に勇気をくれた。コミュニケーションをとる言語だって違う。英語を話している時の自分は、別人になれる気がした。
そもそも、人生をリセットしに来たんじゃないか。安定した会社員を辞めて、息子を巻き込んで日本からルワンダまで来ておいて、同じようにウジウジしていられない。合ってるか間違ってるかなんて、やりながら見つけていくしかない。とにかく今は、やってみるしかないんだ。