生活困窮者の相談に乗り、生活保護の申請を手助け、住まいを紹介するNPO法人・生活支援機構ALL。「困っている人は誰でも、門を叩いてほしい」と代表理事の坂本慎治氏は語る。 ※本連載では書籍『大阪に来たらええやん!西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)より一部を抜粋・編集し、日本の悲惨な実態に迫っていく。
役所の怠慢「生活保護を申し込ませない」…途方に暮れる困窮者の実態 (※画像はイメージです/PIXTA)

受給したくても「門前払い」…役所の酷すぎる怠慢

一時は一家心中を考えながら、生活保護を受けることでなんとか再起し、登校拒否だった子どもたちが一転、学校の人気者になったという話があります。

 

この家族が一家心中を考えたきっかけは、生活保護の申請にいった役所の窓口で「次の住居が決まってから相談に来てください」と門前払いを食らったことでした。

 

この対応は、役所の怠慢だと言わざるをえません。なぜならば、「住所がなくても生活保護は受けられる」からです。

 

そもそも、「住居がないから困っている」わけです。住居がないと何もできないセーフティネットなんて、何の意味もありません。「住居がない」。ただそれだけでその人は、「最底辺」ではないのですから。

 

「生活保護を受けたいです」と相談に来ているのに「無理です」と突っ返してはいけない。相談を受ける立場の人間が、しっかりとした志を持ち、法律に則って話を聞いてあげないといけないのです。

 

改めて述べますが、「住所がなければ生活保護を受けられない」は誤解です。

 

たとえば、西成でホームレスをしている人が、家が借りられないままに生活保護を申請しようとした場合、自分が実際に寝泊まりしている西成の自治体に出向けば、「生活保護の申請をしたい」と相談することはできます。すると自治体が部屋を用意したり、「あそこのシェルターに行きなさい」「ここの寮に行きなさい」と案内しながら、そこで生活保護を受けられるよう手配することもできるのです。

 

確かに、いずれは住居が必要になります。しかし住居がなくても相談はできますし、安い部屋へつないでもらうことだってできます。

 

なのに、そこまでつながない行政も多い。大きな問題です。

 

ちなみに、住民票は兵庫県に置いているけど、今、現実には大阪府でホームレス生活をしている場合でも、大阪府の行政で生活保護の相談をすることはできます。

 

相談は「住民票を置いている場所」だけでなく、「今、生活している場所」でもできるのです。