驚きと怒り…「人によって対応を変える窓口」
生活保護の申請にあたって、行政の窓口がなかなか融通を利かせてくれないのは「窓口に立つ人の勉強不足」のみならず、行政の上のほうから「生活保護を受けに来た人間は、いったん追い返せ」という教育を受けている可能性すらあります。
なぜ私がそう感じるのか。
生活困窮者がひとりで生活保護を申請しに行ったときには、なんやかんやと偉そうな能書きを垂れられて、「もっと就職活動しなさいよ、それでもだめやったらまた来てね」とつっけんどんに追い返され、「そんな追い返され方をしたのか」と私が同席したときには、すんなりと生活保護の申請用紙を出してくれる。このようなことが現実に、何度もあったからです。
ひどいのは、生活困窮者に「生活保護の申請をしたけど、通らなかった」と誤解させてあきらめさせる行政も多いことです。
たとえば、生活保護の申請をしに、行政の窓口に行ったとします。
窓口の人と二言三言話して、帰された。これは決して、「生活保護の申請をしたけど、通らなかった」わけではありません。「生活保護の申請をさせてもらえなかった」だけなのです。
生活保護の審査は、窓口の人が単独で行うわけではありません。窓口の人にどれだけ文句を言われようが、とにかく「生活保護の申請用紙をもらい」「書いて」「出す」。これが大切です。
積極的に申請用紙を出さない窓口も多いので、注意が必要です。本当に「生活保護を申し込ませない教育をされているのではないか」と勘ぐりたくなるほどです。
ある相談者の実話です。
窓口の人に、「まだ若いねんから仕事しなさいよ」「親兄弟に一回、連絡を取ってみなさいよ」と偉そうに能書きを垂れられて、追い返されました。その後、二度、三度と窓口にいっても、同じように、二度も三度も追い返されました。
やがてこの相談者は「もう役所に行っても意味ないわ。生活保護は申請せんとこ。もう誰も助けてくれないわ」と投げやりになり、自殺未遂を繰り返します。
そんな折、たまたま我々の存在を知り、相談したことで、生活保護を受けることができました。
この実例を行政は、どのように受け止めるのでしょうか。
坂本 慎治
NPO法人生活支援機構ALL 代表理事
大阪居住支援ネットワーク協議会 代表理事
株式会社ロキ 代表取締役
※本連載で紹介している事例はすべて、個人が特定されないよう変更されており、名前は仮名となっています。