飛行機代、宿代、食事代…旅にかかる費用すべてを含めて「12万円」で世界を歩く。下川裕治氏の著書『12万円で世界を歩くリターンズ タイ・北極圏・長江・サハリン編』(朝日新聞出版)では、その仰天企画の全貌が明かされている。本連載で紹介するのは北極圏編。30年ぶり2度目の大自然、予想だにしないアクシデントが待っていた!
過酷「日本から北極圏まで12万円の旅」どうにでもしてくれ…の多難 (※写真はイメージです/PIXTA)

時は戻り、現在。「30年ぶり2度目の北極圏」同じルートを辿れるか?

そのルートをなぞるような今回の旅は、日本からの飛行機とホワイトホースへの足で迷走してしまった。30年前とは航空券事情が大きく変わっていた。

 

 

日本とロサンゼルスを往復する航空券と、日本とバンクーバーをつなぐ航空券に、運賃差はほとんどなかった。以前はバンクーバーまでの航空券が高く、しかたなくロサンゼルスに飛んだ。ロサンゼルスからバンクーバーまでは、グレイハウンドの期限内乗り放題バス切符を使うことができた。

 

運賃を検索しながら、少し迷った。ロサンゼルスまで行き、そこからバスでバンクーバーまで行くのが筋ではないか。この旅は30年前の旅をなぞることが目的だ。しかしバス運賃が余分にかかってしまう。30年前にはあったアメリパスという乗り放題切符は、すでに廃止されていた。時代は車へ、そして飛行機へと移り、グレイハウンドは厳しい経営を強いられていた。

 

アメリカのバス事情は、書籍『12万円で世界を歩くリターンズ――赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編』に詳しい。買う時期にもよるが、シアトルからロサンゼルスまで1万3334円もかかっている。シアトルとバンクーバーは国は違うが、230キロほどしか離れていない。

 

あのつらく、長いバス旅にも腰が引けた。前作で乗ったシアトルからロサンゼルスの区間は、アメリカ一周旅の最後の区間だった。マラソンでいったらラストスパートなのだろうが、とてもそんな気力はなく、ただ頭のなかをまっ白にして、バスの座席に20時間以上座っていた。もう、どうにでもしてくれ……といった心境だった。

 

あのルートをもう一度乗る? それは必要ないんじゃない? 費用もかかるし……。忠実になぞる旅を考えれば、悪魔の囁(ささや)きなのだが……。

 

2018年にバスでアメリカを一周して以来、グレイハウンドからは頻繁にメールが届く。キャンペーンの案内なのだが、僕は内容も見ずに即座にゴミ箱へ捨てている。ロサンゼルスからグレイハウンドのバスに乗る気には、どうしてもなれなかった。